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『進化思考ー生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」』(4月21日、太刀川英輔著、海士の風刊)

進化思考──。それはデザインや発明の仕組みを、「人間誰しもが持っている創造性を高めること」とつなげる考え方だ。生物や自然は、約40億年の地球の歴史を通じて「変異と適応」を繰り返すことによって進化してきた。デザインもそれらに倣おう、という発想である。

4月21日、島根県沖合の離島にある海士町の出版社「海士の風」は、第一弾となる書籍『進化思考ー生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」』を刊行する。著者は、慶應義塾大学特別招聘准教授でもあるデザインストラテジストの太刀川英輔氏だ。

「海士の風」は、東京都渋谷区にある出版社、「英治出版」協力のもと、海士町の教育コンサルタント「風と土と」が2019年2月に設立した。代表は京都大学で修士取得後、トヨタ自動車の生産技術エンジニアとして働いた経験を持つ阿部裕志氏だ。

海士町は、推計人口2205人(2021年3月1日時点)の、半農半漁の自然豊かな島である。少子高齢化による人口減少が進んでいたが、同社が行う地域づくり事業や人材育成事業のほか、島一体となって取り組むさまざまな活動により移住者と関係人口を増やし、2010年以降はほぼ横ばいとなっている。

秘境ともいえるこの地で、なぜ出版社が立ち上がったのか。出版第一弾となる書籍「進化思考」とは、どんな内容なのか。太刀川氏と阿部氏に聞いた。


「進化思考」を体現する1島1町の自治体、海士町


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日本海に浮かぶ島根県隠岐諸島にある町、海士町。

「海士町は、『惑星の小さなモデル』そのものです」(太刀川氏)

海士町は人口2000人の島だが、周囲の島々も併せて、少し地球の5大陸に形が似ているという。ここに日本の文化が凝縮し、いまわれわれが考えなければならない社会課題が詰まっている場所、それが海士町なのだ、と太刀川氏は言う。

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太刀川英輔氏

阿部氏は、海士町を都会から遠く離れているからこそ「人として失いたくないものが残っている島」と言う。モノがないから知恵を絞って創造性が溢れ、お互いを思い合う温かい関係性からまた新たな創造性が生まれる。いま世の中で最も必要とされていることを社会モデルとして体現され、それを他の場所にも広げていく可能性を秘めている。だからこそこの地で創業して、出版社を立ち上げ、第一弾として「進化思考」が選ばれたのだという。

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阿部裕志氏

取材・文=長谷川寧々 編集=石井節子

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