2027年までに19億ドル市場に
数年前まで、ベビーテックは投資家が参入したがらないニッチな市場だとされていた。しかしながら、例えばアメリカでは米国疾病予防管理センター(CDC)によると毎年350万人以上の赤ちゃんが生まれている。言い換えれば、ベビーテック関連の企業はアメリカだけで約350万人の新規見込み客を毎年得ているということだ。
その上、いまやベビーテックは「生後」のみならず、妊活や妊娠中の母体と胎児の健康・安全監視から幼児に成長したあとのエデュテインメントにまで及んでいる。まだ十分にイノベーションの余地があり、多くのビジネスチャンスがある市場なのだ。2016年、世界最大級のテクノロジー展示会であるCESにて新しいテクノロジーのジャンルだとして紹介されたことを契機に、ベビーテックはそれまで以上に認知度を上げて急速に成長を続けている。スタートアップや大企業発のベンチャーの参入も活発で、多くのスタートアップが資金調達に成功しているのだ。
一方で、買収されてしまうスタートアップも少なくないという。ベビーテック企業の持つ社会的意義より、その企業の取締役になることに興味があるという投資家が一定数存在しているからだ。「ベビーテック」という用語が大きくなりすぎたという専門家もおり、ベビーテック業界と市場が今後も順調に成長を続けていけるのかどうかは注視が必要である。
多くの製品やサービスがひしめくベビーテック業界において、最大のセグメントはベビーモニターだ。世界の主要な業界・市場・消費者動向に関するデータや統計を提供する世界最大級のプラットフォームStatistaによると、ベビーモニター市場は2027年までに19億ドル前後に達する見込みだという。
しかしながら、COVID-19のパンデミックを受けて、ベビーテックに求められるものや需要にも変化が生じている。現在、ベビーテック製品・サービス・テクノロジーはどのような進化を遂げていて、どのようなものが求められているのだろうか。定番のものから最新のものまで、妊娠前からの時系列に沿って具体的に見ていきたい。
ここまで来た妊活用アプリ、スマートデバイス
妊活をしている女性や自分の身体のサイクルを知っておきたい女性から人気なのが、妊娠可能期間、妊娠しやすい期間を自分のデータをもとに予測してくれるアプリだ。ClueやFloが提供するサイクルアプリは、月経サイクルなどをもとに妊娠しやすい期間を予測する。ただし、いくつかの研究において、サイクルの長さだけを予測材料として使用するアプリは正確な妊娠可能期間の予測を提供できないことが示されているので注意が必要だ。
Clueが提供するサイクルアプリ「Clue Period & Cycle Tracker」:iOs,Japan(画像提供:Clue)
膣内体温計の測定値を使って予測を立てるという、近日リリース予定のKindaraのthe Priya Personal Fertility Systemや、夜だけ着用するブレスレットによってさまざまな生理学的パラメータを追跡して予測を立てるAvaのFertility trackerなど、スマートデバイスも人気が高い。
Kindaraのthe Priya Personal Fertility System(画像提供:Kindara)
AvaのFertility tracker(画像提供:Ava)