これまで養育費の不払いは恒常化しており、厚生労働省の「全国ひとり親世帯等調査」によれば、半数以上の監護親(子どもを監護する親)が養育費を受け取れていない状態が続いていました。
なぜこのような状態が続いていたのか、改正民事執行法の施行で何が変わったのか、施行から1年経った今、改めて考えてみましょう。
養育費を受け取れているのは4人に1人
2019年、日本では20万8496組の夫婦が離婚しました。2003年の28万3854組をピークに、徐々に減少傾向にあるとはいえ、毎年20万組超の夫婦が離婚しています。
離婚件数は徐々に減少しているにもかかわらず、逆に増加しているのが「審判、調停等で争われる離婚後の子の監護をめぐる事件」です。これは、裁判所に申し立てられた養育費の未払いや監護者の指定事件、子の引渡し事件、面会交流事件などを指します。
2005年の離婚件数26万1917件に対し、裁判所への審判及び調停件数は2万5728件で、総離婚件数の9.8%でした。それが、2016年には19.2%(総離婚件数21万7000件、審判及び調停件数4万1603件)と、約2倍に増加しています。
なかでも問題とされているのが、養育費の未払い問題です。前述の「全国ひとり親世帯等調査」によると、「養育費を受けている」と回答したのは24.3%。一方、「養育費を受けたことがない」と回答したのは56.0%と、圧倒的に養育費を受け取れていないのが現状です。
離婚後、監護親(子どもを監護する親)は、非監護親(子どもを監護していない親)に対して、子どもを育てていくための養育に要する費用を請求することができます。この費用が「養育費」です。
養育費は、離婚をしたとしても親として当然支払ってもらうべき費用のはず。にもかかわらず、なぜ日本では養育費の未払いが多いのでしょうか。
現在、日本には養育費の強制徴収を行う行政機関がありません。養育費の未払いについては、あくまでも「個人間の問題」と捉えられ、監護親による養育費交渉と非監護親のモラルに委ねられてきました。そのため、離婚時に養育費についての取り決めはするものの、未払いとなっても打てる手が少なく、あっても訴訟を起こすなど、ハードルが高いことが問題視されていました。