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2021.03.30 08:00

逃げ得は許さない 養育費未払いに刑事罰

Terry Vine/Getty Images


非監護親が養育費を支払わない理由については、収入によっても違いが生じています。独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、年収200万円未満の非監護親が養育費を未払いになる主な理由は「支払い能力の欠如」です。一方、年収500万円以上の非監護親の場合は、再婚したことによる「新しい家族との生活優先」のためとのことです。
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つまり、子どもを抱える監護親は、離婚した非監護親の収入が少なくても多くても、養育費を受け取りづらい状況に置かれているのです。このような現状になっている最大の理由は、これまで養育費を支払わなくても特に罰則がなかったことでしょう。

いわば「逃げ得」の状況に置かれている現状を、国も問題視しており、今回、養育費の未払いについて新たな手段を講じたわけです。2020年4月1日から改正民事執行法が施行され、養育費の未払いについてより厳しい処罰が課せられることになりました。

独自の手段を講じる自治体も全国に


では、改正民事執行法の施行によって、何がどう厳しく変わったのでしょうか。
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養育費を回収するにあたって効果的なのは「財産の差し押さえ」です。裁判所の命令によって非監護親の財産を差し押さえ、その財産の中から未払いの養育費を回収する、これが比較的スムーズな措置でしょう。

改正前もこの手段は取れたのですが、実は差し押さえるために財産がどれくらいあるのかを開示させる「財産開示手続」で虚偽申告が行われる場合もあるなど、実態にそぐわない運用となっていました。財産開示手続の罪は行政罰(前科はつかない)で、罰則も最大30万円の科料で、「養育費を払うくらいなら罰金を払ったほうが安かった」からです。

この点が、今回の改正民事執行法によって、罪は刑事罰(前科がつく)で、罰則も6カ月以下の懲役、または50万円以下の罰金となり重くなりました。これで、それまで非監護親の財産がわからなかったがために泣き寝入りしていた監護親への救済が期待されるようになりました。

それでもなお、虚偽申告して財産を不当に少なく見せる非監護親がいることも想定されます。この点についても、虚偽申告や隠蔽を防ぐために「第三者からの情報取得手続き」も取れるようになりました。第三者からの情報取得手続きを利用することで、裁判所を通じて、市町村や年金事務所などに照会することができます。この措置によって、現在の勤務先に関する情報を取得して、給与債権の差押えにつなげることができ、より正確に非監護親の財産情報を把握できるようになることが期待されています。

養育費を受け取れない監護親の救済のため、独自の手段を講じる自治体も出てきました。兵庫県明石市は、2020年7〜8月に養育費を受け取れていない人の代わりに市が非監護親に催促。それでも支払われない場合には、明石市がその金額を立て替え、その分を非監護親から回収するという支援事業を行いました。

同様の施策は、宮城県仙台市、東京都豊島区、千葉県船橋市、神奈川県横須賀市など全国へと拡大しています。

[訂正]改正民事執行法が施行された年に誤りがありました。ただしくは2020年です。お詫びして訂正いたします。

連載:元榮太一郎の「激動するこれからの時代で輝くためには」
過去記事はこちら>>

文=元榮太一郎

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