筆者の友人のレイ・ブライアンは、この年、その栄冠に輝いた幸運な馬主のひとりだ(実は、彼は2011年のプリークネスステークスに出走したキングコンギーの一口馬主でもあったので、このときが特別に幸運だったわけではない)。
ブライアンはニューヨーク州サラトガ在住で、ウェスト・ポイント・サラブレッズとドニゴール・レーシングの組合馬主制度を利用してデュラハンの一口馬主になった。デュラハンはこの年のケンタッキーダービーでアイルハブアナザーにわずか一馬身差で三着に入った競走馬だ。
夢のような馬主の生活
馬主として三冠レースの時期を過ごすという夢のような生活は、実際はどんなものなのだろう? 筆者は現地を訪れ、一週間にわたってブライアンを密着取材した。この時の競馬界は、アイルハブアナザーがベルモントステークスで優勝すれば34年ぶりの三冠達成となるため、過去にないほどの盛り上がりを見せており、ブライアンが所有するデュラハンは一番の対抗馬と目されていた。
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6月3日(日曜日)
ブライアンは朝4時半に起床すると、車で3時間かけてベルモントに行き、デュラハンの調教の様子を見学した。デュラハンの仕上がりは上々だった。パヴィエル・カステリャーノを背に風のように軽快に、4ハロンを45.82秒、5ハロンを58.91秒で駆け抜けた。
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ストライドも大きく、優雅な走りだった。ブライアンいわく「どちらも今日の最高タイムだ。ブルーグラスステークスの前と似た状態なので、あのときのようにいい成績をおさめられると期待している」。
その日の夜、ブライアンは負傷騎手基金の資金調達パーティーに出席した。騎手のカステリャーノ、エドガー・プラード、ロジブ・マラージが地元のイタリアンレストランでバーテンダーコンテストを開催した。
6月4日(月曜日)~6月5日(火曜日)
ベルモントの競馬場はレース開催がない日だったので、ブライアンは新聞を読みあさり、それから面倒な事務作業をたくさんこなした。ドニゴール・レーシング関係の友人や家族、総勢300人ほどがレースを見に来ることになっていた。ブライアンの談「入場券の手配や食事と観戦場所の確認、イベント参加の準備など、やることが山ほどある」。