「せいせいした」 トランプ・プラザ爆破を祝った地元の心境

著者撮影

今月16日、厳しく冷え込んだ朝を迎えた米ニュージャージー州アトランティックシティーのボードウォークで、午前9時過ぎに警笛が鳴り響くと、かつてトランプ・プラザ・ホテル・アンド・カジノが営業していたビルからは、かもめの群れが一斉に飛び立った。

各階からはダイナマイト3800本分の爆音がとどろき、34階建てのビルは19.5秒で崩壊。粉じんが雲となって大西洋へと巻き上がった。ドナルド・トランプ前大統領がこのカジノ都市に建設した最後のビルはこうして解体され、トランプと同市の40年にわたる複雑な関係の名残は姿を消した。

同市在住歴が30年近いジーナ・ウィズラックは爆破前、ボードウォークを挟んで向かい側のワン・アトランティックのテーブルに座って、ビルの最後の姿を見届けた。ウィズラックは、解体見物のために複数の最前列席を500ドル(約5万3000円)で競り落としていた。

「トランプが中にいたらいいのに思う。トランプはアトランティックシティーで多くの小規模事業者を踏みにじった。トランプなどくそくらえだ。だから私たちは皆、見物に来た」

トランプ・プラザ・ホテル・アンド・カジノはトランプがニュージャージー州にかつて所有していたカジノ施設3つのうちの1つ目だった。カジノはいずれも何度も破産保護を申請し、最終的には全て倒産。トランプは同市で長きにわたり、利益相反取引や経営難、小さな家族経営企業への支払い拒否により悪名をとどろかせてきた。

ビル解体はこれ以上ないほど絶妙なタイミングで行われた。トランプ2度目の弾劾裁判がちょうど終わり、トランプ政権の終わりを祝うために数百人の見物人が同市に集まった。同市は新型コロナウイルスの流行によりホスピタリティー業界が大打撃を受ける前から財政難に苦しんでおり、シーザーズなど付近のホテルでは、解体見物のための訪問客急増に乗じて平日の宿泊料が値上げされた。

トランプ・プラザの解体は、同市にとって特別な意味を持つものだ。解体を公約の一つとしていたマーティー・スモール市長は先週のインタビューで、「トランプは多くの人をだまし、アトランティックシティーを笑いものにした」と語った。

ロングアイランドから見物に訪れたクリス・ビレラは、解体が持つ象徴的な意味と、このタイミングを見物の理由に挙げ、「トランプ政権に合った最後だ。せいせいした。くずは出ていけ」と語った。
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編集=遠藤宗生

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