自由貿易理論のメリットは、消費者としては、他国から安く手に入るものを購入でき、購入できる品物のバリエーションも広がること、それらの結果として所得格差が縮小することが挙げられる。
一方、保護貿易主義は、一般的には自国の産業を保護するためという大義名分はあるが、副作用として自国産業が競争に晒されないため、かえって技術的発展が遅れるデメリットや、輸入関税が掛けられ、輸入品の価格上昇につながり、特に低所得者層にその影響を与え、経済格差が拡大するというデメリットが挙げられる。
トランプ政権時代、対中国に対して強行姿勢を示し、中国の輸入品に関税を掛け、保護貿易主義を取ってきた。その副作用によるインフレ率は、2017年から2.14%、2.41%、1.81%と推移したが、特に2020年からはコロナ禍ということもあり1.54%となり、実質ゼロ金利政策を維持している。
バイデン政権は、前政権と同様に強行姿勢を維持する模様であるが、前政権の反国際協調主義で失ったアメリカの信用を、国際協調主義に舵を切り直して、再び取り戻せるのか、対米投資額が再び増加する政策を取るのかは、今後のアメリカを占う意味でも重要な指標である。
バイデン政権になってから、大手の資産運用会社であるブラックロック社も、トランプ政権時代には余り強く打ち出せなかった環境に配慮したESG投資を重視すると言い出した。環境や再生エネルギーに強く関心を持っているミレニアル世代も含めた投資家を意識した方針転換である。
コロナ禍で増加したミレニアル世代の投資家
2020年、日米だけでなく、先進国各国は戦時並みの財政出動、金融緩和に踏み切った。経済が失速しないように、ジャブジャブお金を刷り、失血を避けるように「輸血」をし続けている。その余ったお金は、やはり不動産や株式市場に流れ込んでいる。
そんな状況下で、ミレニアル世代をターゲットに2015年3月にローンチされた投資アプリ「ロビンフッド」が、2020年3月のコロナショック後、個人の新規口座開設数を確実に伸ばしている。
従来のオンライン証券では、取引額がわずかでも1回ごとに手数料を徴収するビジネスモデルだったが、ロビンフッドはそれを無料化。言わば「投資の民主化、大衆化」を行ってきた。
すると結果的に他の証券会社も取引手数料を無料化して追随せざるを得なくなり、業界の常識をロビンフッドがすっかり塗り替えてしまうこととなったのだ。
2020年3月に株が下落した頃から、日米でも個人による証券口座の開設数は激増した。アメリカでは給付金が1人一律1200ドルあり、仕事が無くなり時間ができたせいもあって、個人がそれを元手に株式などの取引を始めた。この1200ドルが3月からのアメリカの株式市場を押し上げた一因とも言われている。
ニュース専門放送局のCNBCによれば、2020年3月以降、新規の証券口座開設は300万となり、6月末までに1300万人のユーザーを獲得。取引額も既に前年から98%増となった。
さらに2020年末からは、追加で給付金600ドルの支給が開始された。かつてアラン・グリーンスパン第13代FRB議長が「バブルはバブルが弾けて初めてバブルだったとわかる」と語ったように、株式市場が活況を呈しているのは間違いないが、既にこのオルゴールに合わせた踊りがいつ止まるかわからないまま、踊り続けているような状況だ。3月末までには、また1400ドル程度の給付金を追加する法案の審議が進むと言われている。このままでは株式市場はどうなるのかわからない。