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スタートアップのすゝめ

Luis Alvarez/Getty Images

振り返ると2020年は新型コロナウイルスによる激動の年だった。ここアメリカでも感染はいまだに収まる気配は見せておらず、2021年もまた多難な年であろうことは想像に難くない。

アメリカのシリコンバレーではリモートワークが日常として定着し、子供たちの学校の遠隔授業もそれなりにこなれてきた。

2020年の3月にアメリカでコロナ禍が急激な広がりを見せた当初は、スタートアップ界隈でも資金の確保の困難が予測され、投資家も一斉に新規投資の引き締めに走った。

先が見えない状況のなかで、2020年はスタートアップにとって「冬の年」になるのではないかという悲観的な見方も多かった。

サンフランシスコの家賃は30%下落


だが、それは杞憂に終わった。

NVCA(National Venture Capital Association)が発表したデータによると、2020年のアメリカのVCによるスタートアップへの投資は1500億ドルを超え、過去最高を記録した。株式市場においてもテック関連株が多いNASDAQは2020年43.6%の高騰を記録し、GAFAをはじめとする巨大テック企業の強さがさらに際立つこととなった1年であった。

コロナ禍という予測することができなかった大きな環境の変化に対し、テクノロジー、そしてそれを活用することで環境に適応していくスタートアップのビジネスが大きく伸びることになったのは、むしろ当初から予期すべきことだったのかもしれない。

コロナ禍がもたらした人々の生活や働き方の変化は、テクノロジー業界の流れを5年から10年先取りさせたとも言われている。Eコマースへのシフト、リモートワークなど、さまざまな理由で普及のスピードが遅れていたものが、コロナ禍という不可避な力によって一気に加速した。

その変化の多くは不可逆なものとして今後も定着していく可能性が高い。特にリモートワークの普及は、働き方のみならず、場所という面での人材の流動性の高まりが、これからの社会を変えていく大きなうねりになりそうな気配を感じている。

シリコンバレーのエコシステムは、半世紀以上も前の半導体の黎明期から積み上げられてきたものであるが、特にここ10年ほどは、サンフランシスコがスタートアップのエコシステムをドライブする中心地であった。サンフランシスコのバーは夜になると若い起業家やテック企業のエンジニア、そして投資家たちで溢れ、オフラインでの活発なコミュニティが形成されていった。

一方で、サンフランシスコの家賃は高騰を続け、それに歩を合わせるように人々の待遇も上がり続けたため、スタートアップには人件費が重たく負担としてのしかかった。それでもスタートアップにとっては、サンフランシスコという場所が人材や資金集めの面で魅力的であったため、無理をしてでもこの地に留まるスタートアップは少なくなかった。

文=村瀬 功

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