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獣医師が考える「人間と動物のつながり」

Mikhaylovskiy/Shutterstock.com

昨年は、新型コロナウイルス感染症の話題で終始した1年だった。そのなかにあって、議論がやや下火となってしまい、残念に思えたのが「レジ袋の有料化」だった。

レジ袋の有料化は、日本でもようやく始まったプラスチックの使用削減をめぐる初の公的な動きとなったが、コロナ禍の現在、使い捨てのマスクや防護服が大量に必要とされている現状とこの話題は、並行して考えるべき点も多い。そこで、プラスチックの使用削減を目指す背景と現状について少し振り返ってみたいと思う。

世界中がプラスチックの使用削減を目指して、急展開し始めたように思える背景には、自然環境へ流出するプラスチックの量が、思いのほか膨大であると再認識されたことが大きい。

2016年に開催された世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で報告された、「現在と同じようにプラスチックの消費と廃棄が続けられれば、海のプラスチックごみの総重量は、2050年には海洋生物の総重量を超える」という試算は、センセーショナルなものだった。

海洋生物には、クジラやイルカなどの大型哺乳類から、多種にわたる魚類、プランクトンといった小さな生き物まで含まれる。広大な海洋に生息する、無尽蔵な資源とさえイメージされる生き物すべての重量と、ごみの重量がイコールになることなどとても想像し難く思える。しかし、そのような事態が、遠い未来ではなく、およそ30年後にはやって来るというのだ。

クジラの胃から100キロのごみ


プラスチックの生産と消費は、戦後の1950年代から、指数関数的に伸びてきた。現在は、世界で毎年新たに約4億トンのプラスチックが生産されているという。その中で、適切に処分されず、環境中に流出したプラスチックごみが、最終的にたどり着く場所とされているのが海洋だ。

シート状のプラスチックであれば風に飛ばされやすく、容器類などは水に浮いて運ばれやすい。誰にも回収されず放棄されたプラスチックごみは、結果的に河川などを介して海へ運ばれ、集まっていく。

さらにプラスチックは、紫外線で劣化し、粉々に砕けるという厄介な性質も持ち合わせている。日光を遮るものがない海岸や海洋では、プラスチックの劣化が進みやすく、小さなプラスチック片が大量に生み出され、拡散しているという。

このような、大小さまざまなプラスチックが、膨大な量となって海洋に集まっていることに、危機感が抱かれ始めたというわけだ。

文=西岡真由美

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