ビジネス

2021.01.31 11:30

僕らが目指す「寄付からはじまる、いまよりちょっと、いい世界」


鼎談中にも多くのアイデアが出てきたように、solioは発展途上のプラットフォーム。このサービスが浸透して寄付が文化として根づくと、社会はどう変わるのか。3人が描く理想像を明かしてもらった。

今井:公共的な課題に対して行政や企業が動けないときは、NPOが動かないといけません。寄付はそれを迅速に行うための資本です。寄付が活発な社会は、みんなが自ら望む社会をつくるための行動に落とし込んでいる社会といえるのではないでしょうか。

家入:僕も今井さんに近い。例えば「電車の中にベビーカーを持ち込むな」という人に対して、「もっと寛容になって」と啓蒙しても、なかなか価値観は変わらないと思う。それを変えるきっかけの一つが寄付でしょう。

人のポートフォリオを見て「子育て支援」に寄付をしたら、泣いている子どもをちょっと許せるようになるかもしれない。寄付することで社会課題が自分事になって行動が変わり、行動が変わることで価値観も変わっていく。寄付する人が増えると、草の根で行動が変わっていって、その総量として社会の価値観もアップデートされていくんじゃないかと。

:「草の根」は重要なキーワードですね。寄付を増やすには二つの方向性があります。一つは「孫正義にもっと寄付してもらおう」という寄付の単価を上げるアプローチ。これはお金を持っている人から持たざる人に再配分する考え方。もう一つは、寄付する人数を増やす草の根のアプローチ。こちらは、みんなで支え合う互助の思想です。

僕らが目指す世界観は、互助のほうです。月500円から寄付できる仕組みにしているのも、額に関係なく人数を増やしたいからです。余裕のある人もない人も、寄付を通して、みんなが普段から助け合う社会になればいいと思っています。


Solio◎2020年11月にリリースされた、社会課題(ジャンル)を選んで寄付をする、ソーシャル・ポートフォリオ・プラットフォーム「solio」。「国際協力」「出産・子育て支援」「子どもの教育」「障がい・介護支援」「就職・雇用支援」「人権保護」「女性支援」「社会教育推進」「保健・医療増進」「自然・環境保全」「動物保護」「防災・被災地支援」の12ジャンルがある。ジャンルごとに複数の寄付先団体が登録されている。

今井紀明◎1985年生まれ。立命館アジア太平洋大学(APU)卒業。専門商社勤務を経て、2012年に認定NPO法人D×Pを設立し、理事長に就任し、現在に至る。2018年にSOLIO代表取締役に就任。

桂 大介◎1985年生まれ。大学在学中の2006年にリブセンスを共同創業し、12年に東証一部上場。一般社団法人新しい贈与論の設立、SOLIOの設立などを通じて寄付や贈与の価値を見直している。

家入一真◎1978年生まれ。2003年paperboy&co.(現GMOペパボ)創業、08年JASDAQ市場最年少で上場。11年CAMPFIREを創業。12年BASEを共同創業、19年東証マザーズ上場。SOLIO顧問に就任。

文=村上 敬、写真=冨貴塚悠太

この記事は 「Forbes JAPAN No.079 2021年3月号(2021/1/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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