1月25日発売のフォーブス ジャパン3月号では「新しい価値」の設計者たちをテーマに、建築家、映画監督、音楽プロデューサー、大学教員、教育やシビックテックのNPO代表、官僚など、さまざまな分野の25人をピックアップ。彼らの「新しい価値」観とそれを社会実装する取り組みを紹介。本誌掲載記事から一部お届けする。
毎月の寄付する金額と気になる社会課題(ジャンル)の関心の度合いを設定するだけという新たな寄付のかたちが生まれている。「寄付からはじまる、いまよりちょっと、いい世界」とは。
「寄付はコーヒーを買うように」。ハードルの高かった寄付という行為が、今後はカジュアルなものになるかもしれない。20年11月、ポートフォリオ型の寄付プラットフォーム「solio」がリリースされた。利用者は12の社会課題の中から寄付したいジャンルを選択。個別のNPOに詳しくなくても気軽に寄付ができる。
発案は、クラウドファンディングCAMPFIREを創業した家入一真。インターネットメディアを運営するリブセンス共同創業者で、一般社団法人新しい贈与論を設立して寄付や贈与の価値の再構築を図る桂大介や、10代の孤立を解決する認定NPO法人D×P代表の今井紀明を巻き込んでSOLIOを立ち上げた。
バックグラウンドが異なる3人は、寄付を身近にすることでどのような社会をつくろうとしているのか。まずは立ち上げの経緯から語り合ってもらった。
家入:CAMPFIREは不特定多数の方から少しずつ資金を集める仕組みを展開しています。ただ、クラウドファンディングはすごい熱量とともに資金が集まるものの、プロジェクト単位だから一過性になりがちという問題意識があり、もっと持続可能なかたちで寄付できる仕組みがほしいと考えていました。
現状、NPOへの寄付の形式は古くてバラバラ。例えばスマホに対応していなかったり、活動報告がそれぞれ紙で送られてきたりする。ぜんぶ一つの管理画面で見られたら便利なのに、というところが出発点でした。
ただ、便利なだけじゃおもしろくない。そこで考えたのが「可視化」です。桂さんのように寄付している人は世の中にけっこういる。一方で、寄付したいと思っていても、どこに寄付していいのかわからなくて躊躇している人たちも多い。
だから、すでに寄付している人たちがどのようなジャンルに寄付しているか可視化できれば、「あの人は信頼できるから、自分も同じ領域で寄付してみようか」と一歩踏み出せるかもしれない。利便性に加えて可視化で寄付のハードルを下げようというのが僕のコンセプトでした。
桂:寄付には、寄付する人はすごい人で、そうでない人は関心があっても「お金持ちになったら寄付したい」と終わらせる風潮がある。この「与える人と受け取る人」という二元論を壊したかった。そう考えていたところに僕は声をかけてもらいましたが、家入さんは今井さんをどうして誘ったんでしたっけ?