製造・販売するのは、神奈川県茅ヶ崎市に自社工場を持つロイヤルブルーティー。同社は非加熱抽出・非加熱濾過除菌で抽出したお茶を1本5000円〜2万5000円で売り出しているが、2009年から1本20〜60万円というさらに高価格帯のスーパープレミアムシリーズを展開している。
その第5弾として、去年10月、15本限定で発売されたのが「King of Green MASA Super premium」。穏やかな色あいからは想像もつかないほどの濃厚な旨味を持つお茶は、白トリュフのような香りを漂わせる。
このスーパープレミアムシリーズに使われる茶葉は一般にはなかなか手に入らない最高級のもので、今回は2019年8月に行われた第73回全国茶品評会で「普通煎茶(手摘み煎茶)の部(4kg)」農林水産大臣賞1等1席を受賞した茶が使われている。育てたのは、齢80歳の太田昌孝氏。日本茶の世界の最高峰、天皇杯、そして黄綬褒賞も受賞した茶づくりの名人だ。
日本茶業界に一石を
なぜ30万円もの高級茶を売るのか。そこには、「斜陽産業になりつつある日本茶業界に一石を投じたい」という思いがあったという。
ロイヤルブルーティーの吉本桂子社長は、お酒を飲まない人も、ワインと同じように楽しめるノンアルコールドリンク、さらに水質や抽出温度などに左右されず、誰が注いでもおいしいお茶として、手摘みの茶葉にこだわったボトルドティーの販売を検討していた。
日本茶について調べる中で、日本茶業界の消費構造の変化に気付いた。「ペットボトル入りの日本茶が世界で初めて発売されたのが1990年。新しい飲み方を提案し、お茶を飲む習慣を維持することに貢献したが、それでお茶業界が潤っていると思ったら、そうではなかった」と吉本氏は言う。
贈答用に使われる高級茶は、木の栄養が最大限になったタイミングで年の最初に芽を摘む「一番茶」が主流だが、日常的に飲まれるペットボトル用のお茶は、三番茶、四番茶まで摘み取る。摘み取る回数が多い分、木は弱るため、化学肥料を使うようになり、味も落ちる。
さらに、家庭でお茶を淹れる機会が減り、これまで贈答などで使われていた高級茶の需要も下がるばかりで、市場価格は下落しているという。