前編では、1カ月の開発期間に彼らに密着し、メンターたちと共に試行錯誤しながら開発を進める様子を詳報した。
今回は、37カ国の学生たちが一同に会するグローバルワークショップ本番の様子をお伝えする。世界の舞台に立ったチーム「hummingbird」の健闘ぶりやいかに──。
今年は「バーチャル空間」で開催 上位10位に選出!
12月13日、3日間にわたるグローバルワークショップの最終日。いよいよ応募総数3865組のなかから、最も未来を感じられる2020年のベストアイデアが決まる。
グローバルワークショップは例年であれば、世界各国の代表が一カ所に集まり、交流する場ともなる。今年はコペンハーゲンでの開催が予定されていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、オンラインでの開催となった。
しかし、この大会のために用意されたオンラインプラットフォームは、リアルなコミュニケーションが交わせるように工夫が凝らされたバーチャル空間だ。参加者のアバターがレッドブルベースメントのプラットフォーム上に現れ、そのアバターを動かすと、近くにいる他の国の人たちとオンライン通話が繋がり、顔を見ながら話すことができる。
Red Bull Basement 2020準決勝の様子。各国代表がホログラムとなって会場に現れる。
日本代表の「hummingbird」は予選を通過して、上位10チームに選ばれ、準決勝に進出。準決勝のピッチは、事前に収録されたプレゼンの映像が司会者のいる会場にホログラムとなって現れる。須田と袴谷は、甚平姿で臨んだ。そして審査員による質疑応答へ。本社オーストリアの会場と東京にいる2人を中継でつなぎ、その場で答えた。
1カ月のメンタリング期間を経て、彼らは音力発電でスマホの充電を行う案でグローバルワークショップに挑んでいた。これまで音力発電の分野では充分にマーケティングが行われてこなかったことに着目し、技術面よりも彼らが音力に見出す「可能性」を打ち出すプレゼンを行った。
しかし審査員たちからは、技術面や実現可能性について、容赦なく具体的な質問が浴びせられる。
「具体的にはどのように音を集めるの?」「音のピッチは発電に影響する?」
須田と袴谷は、機転を利かせた返答をした。
「(音力発電の装置を)街中の壁や高速道路に埋め込むことで、効果的に集音することができます」「音は低い方が発電には効果的です。工事現場の騒音や飛行機が飛ぶ音を想像してください」
事前に想定質問に対する回答を練ったという須田と袴谷は、本番前に私たちには明かさなかったような情報まで織り交ぜて答えていた。