グローバルワークショップでは、チームワークを見せていた須田と袴谷。須田がチームリーダーで技術面のアイデアをまとめ、袴谷がプレゼンのストーリー作りを主に担当した。見た目も性格も「正反対」という2人のアイデアがまとまり始めたのも直前だった。
グローバルワークショップの2日前、ピッチの最終練習を行っていた時のこと。本番を前に、優勝を目指す2人は「緊張するが、各国代表とコミュニケーションを取れるのが楽しみ」と語っていた。
そんな2人に向けて、これまで伴走してきたメンターの一人、トーチリレー代表の神保拓也が「この1カ月の学びとして未来にもっていってほしいことがあります」と語り始めた。
「メンタリング中、無下に案をぶった切られることもあったと言っていましたが、その通りです。一切子ども扱いをしないで、イノベーターの卵として接するようにしたからです。起業家に必要なのはパッションや熱意だとはよく言われますが、本気で変革者になりたいのなら、熱意だけでは難しいのも事実。だからこそ、夢見がちで、奇抜な発想を売りにしただけのアイデアにはかなり厳しく接したと思う」
そう振り返り、その意図を説明した。
「夢見がちになると、アイデアを『産む』ことには一生懸命だが、そこまでで終えてしまう。でも本当は、『産む』だけでなく、目をかけ、『育てる』ことこそが大事。だからこそ、アイデアは育てる覚悟をもって産むべき、と常に思っています。アイデアは子どもと同じで、産むことだけじゃなく育てるところまでがセット。そこを忘れずに今後のイノベーターライフに生かしてほしい」
1カ月間の開発期間を終えた彼らは、何を思うのだろうか。
技術メンターを務めたマクアケのR&Dプロデューサー/クリエイティブディレクター北原成憲は、2人の成長ぶりについてこう述べた。
「最初は優勝のためにやってるみたいな表層的なアイデアでしたが、自分たちが何をやりたいのかに向き合い、チームとして納得できるものなのかを2人とも考えられるようになったと思います。
須田くんはとても頭が切れて器用。だからこそ最初はアイデアへの指摘に対して論破しようとするようなところがあったが、最後にはちゃんと自分の心に向き合い、チームの意見を聞いて、意志をもって答えられるようになったのが印象的でした。
袴谷くんはよく発言して意欲もあって、突っ走るタイプに見えました。なので須田くんのサポート役を担う場面もあって、自分を見失うこともあったかもしれないけど、最後はしっかりと人の話を聞いていて、自分の役割を果たすことを学んだと思います」
互いに足りない部分を補い合い、正反対の2人はいいコンビへと成長していった。
開発期間について、須田も袴谷も「何をやりたいのかを見つめ直すことができた。自分の軸をもつことの大切さを知った」と振り返る。本番での彼らの振り切ったパフォーマンスからは、成長したことへの自信が伝わってきた。
Red Bull Basement当日の2人の様子。チームワークを発揮した (c) Gaku Miwa / Red Bull Content Pool