専門家は、今年春と夏の段階では、中国とイタリアの感染データに基づいた試算で、集団免疫を達成するためには人口の60〜70%が免疫を獲得する必要があると推定していた。
しかし、11月に入ってからファウチ博士は基準値を75〜85%に上げ始めた。博士は、先日のニューヨーク・タイムズ(NYT)の取材に、人々のワクチンへの信頼感が高まっていることや、事態を正しく認識するための心づもりが出来ていると感じることを理由に、目標値を引き上げることに抵抗感がないと語った。
24日にNYTに掲載されたインタビューでファウチ博士は、集団免疫の獲得に必要な基準値を、90%というこれまでで最も高い水準に引き上げた。
科学者たちは、ウイルスが初期のデータが示唆していたよりも高い感染力を持つ可能性が高いことや、新型のウイルスの発生、スーパースプレッダーの影響などを考慮して、推定値を上方修正している。
専門家たちは仮に年内に、十分な数の人々がワクチンを接種したとしても、ウイルスが根絶されることはないかもしれないし、インフルエンザのように永遠につきまとうものになるかもしれないと、述べている。しかし、一つだけ明確なのは、ワクチンがウイルスの感染力を大幅に弱め、人々に日常を取り戻させることだ。
「私たちは謙虚にならねばならない。はっきりした数字をあげることはできないが、個人的には70~90%の間のどこかだと思う」とファウチ博士はNYTに語った。
米国ではワクチンについてのフェイクニュースの拡散や、政府機関への不信感などにより、ワクチンについて懐疑的な人々も多い。しかし、ここ最近の世論調査では変化も見られ、今週発表されたイプソスの世論調査によると、83%のアメリカ人が最終的に接種すると回答した。これは、9月に報告された数字の77%よりも高くなっている。
40%のワクチン接種でも効果が現れる
ファウチ博士は15日のVoxの記事で、米国人の40%か50%程度がワクチンを摂取した段階で、すでに感染動向に変化が見られるだろうと述べていた。
科学者らは、集団免疫を獲得するための最も安全な方法は、できるだけ多くの人にワクチンを接種させることだと述べている。パンデミックの初期には、トランプ大統領の新型コロナウイルス対策で特別顧問を務めたスコット・アトラス医師(11月30日に辞任)などの右派の専門家や、ブラジルやスウェーデン政府までもが、「自然な」集団免疫のアイデアを主張していた。
この考えは、ウイルスの拡散を放置して、すぐに危険にさらされない人々に感染させ、それによって集団免疫を構築しようとするものだった。このアイデアは、あまりにも多くの代償を伴うことや、効果が保証されないことから、疫学者たちによって却下されていた。