離婚してシングルマザーになり、仕事をしながら子育てをするようになると、あることに気づいた。帰宅すると、子どもが「ママ、今日は何があったの?」と話を聞いてくれたり、疲れた自分を労ってくれたりするのだ。
「それまで私が子どもにいろんなものを与えているのだと思っていましたが、子どもからもらっているんだと気づきました。今ではもう2人とも大きいので、子どもって感じではありませんが」
紫原さんは子どもに対して「こうしなさい」と、自分の価値観を押し付けないようにしてきた。現在、息子は18歳、娘は15歳。今年8月、2人の子は奇しくも同時期に親元を離れて暮らし始めた。
決断は「そうならざるを得ない」と思った時に
息子は全日制の高校を中退し、DJの活動をしながら通信制高校に通う。忙しくなってきたこともあり今年、一人暮らしを始めた。一方、娘は、私立の中学校に通っていたのをやめ、かねてより希望していたフランス留学へと飛び立った。
「彼らのお父さんも高校を中退しているし、私も大学に行かずに専門学校をやめました。どうしても自分に合わないものには耐えられないんですよ。そんな環境で育ってるから、子どもたちもそうならざるを得ませんよね」
「やめる」ことのリスクを考えて、躊躇してしまわないのだろうか。こんな疑問に、紫原さんはこう答えた。
「やめることを決めるっていうよりも、自然な成り行きでそうならざるを得ないと思った時に決断しているんですよね。こうしないといけないという固定観念は元々ないし、どうにもできないことは悩まないようにしています」
紫原さんの2人の子どもはこの夏、親元を離れる選択をした。そこで、家族観にある変化があったという
一方で、紫原さん自身も子どもたちに対して「せめて中学校や高校には行くだろう」とは思っていた。だが、学校に行きたくないという娘に「行きなさい!」と言っても、逆効果だった。娘は休学期間中に自分の興味に沿って、世界史などの勉強を進めて、その期間を有効活用していた。それを見て「ああこの人は自分に必要なものを選択できるのか……」と悟った。
息子がDJをするという選択も「どうなるんだろう?」と思っていたが、いつの間にかお金をもらえるようになっていた。そんな子どもたちの姿を見て、紫原さんはこう思った。
「本人たちもレールを外れた以上は、自分で自分の人生を見つけなければという気持ちを持っています。だから私は基本的には黙って見ていることにしています。ここが自分の居場所じゃないと思ったら、気が済むまで自分の場所を探したらいいと思う。私もそうだったから」
離婚という決断は、紫原さんに「3つの柱」をもたらしたと考える。それは子どもたちと築く「家庭」「仕事」そしてたまに「恋愛」だ。
「最近つくづく思うのは、今の『ものを書く』という仕事に出会えてよかったなということ。仕事といっても、私の関心ごとの延長線上にあって、知りたいことを書いてシェアできる。バズらなくても、やる価値があると思える。それがたまたまうまくいけば、自己効力感が得られるし。離婚後には、家族以外にも依存先ができて自立に繋がりました」