この「成長マネジメント能力」と「心理マネジメント能力」もまた、AIでは決して代替できないものであり、いずれも、これからの高度知識社会においては、職場のマネジャーやリーダーにとって、極めて重要な能力になっていく。
場をつくり、実現するクリエイティビティ
最後の「クリエイティビティ」については、「革新的な技術の発明」や「斬新なデザインの発案」などの天才的能力は、AIでは決して代替できないものであるが、一方、そうした能力は、誰もが発揮できるものではない。
では、AI時代に、誰もが発揮できる「クリエイティビティ」とは、何か。
それは、次の2つの能力である。
第1に、「集合知マネジメント能力」である。
それは、組織のメンバーが集まり、それぞれの知識と智恵を出し合い、そこから新たな知識や智恵が「創発」(emergence)してくるプロセスを促す能力である。
そして、この「集合知マネジメント能力」を発揮するために重要なものは、組織のメンバーがわくわくするようなビジョンを語る「ビジョン・メッセージ能力」と、メンバーが小さなエゴを超えて、互いに協力し合える場を創る「エゴ・マネジメント能力」である。
第2に、「組織内アイデア実現能力」である。
それは、組織において、単に新たなアイデアを「発案」するだけでなく、そのアイデアを周囲に魅力的に説明し、上司をうまく説得し、組織を円滑に動かすことによって、そのアイデアを「実現」する能力である。
実は、企業組織において真に求められる「クリエイティビティ」とは、単なる「新規アイデア発案能力」ではなく、こうした「集合知マネジメント能力」や「組織内アイデア実現能力」であり、この2つの能力もまた、AIでは決して代替できないものである。
以上、コロナ危機が加速する第4次産業革命において、人間だけが発揮できる高度な能力として、次の「6つの能力」を挙げた。
・非言語的コミュニケーション能力
・顧客に対する深い共感能力
・成長マネジメント能力
・心理マネジメント能力
・集合知マネジメント能力
・組織内アイデア実現能力
この深刻な危機と急激な革命によって、これから、高度な専門職も含め、多くの失業者が発生する。
国家も企業も、深い先見性を持って、国民や社員がこの「6つの能力」を身につけていくことを全面的に支援しなければ、これから到来する大量失業の時代を超えていくことはできない。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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