ビジネス

2020.11.30 10:00

なぜ大企業の「既存事業」からイノベーションは起きないのか?


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谷本:では、これからの雇用体系についてはどのようにお考えですか?

楢﨑:私は損保ジャパンにくるまでは7回の転職を経験しているのですが、もちろん社内でもこうした人材は唯一僕だけなのです。でも、これをおかしいと思う人の方がおかしいわけで、多様性を求められる現在の企業は、外の世界を知っている魅力的な発想をする人材が欲しいし、その発想を有効に使いたいと思っているはずです。

中には企業内での配置転換をネガティブにとらえる人たちがいますが、それをおかしいと思う人たちが増えてくるようにしなければならない。まずはEQ能力をのばし、発揮できる場所を社内で見つける。そうすると、会社で仕事をする楽しみが生まれてくる。配置転換もネガティブに考えるのではなく、自分がやりたいことができる場所への移動というようにポジティブに考える人材を増やしていくことが大切だと思っています。

馬場:クリエイティブ思考や起業家精神を持っている人材はたくさんいると思います。でも、その先をいく、経験ある人たちが自分たちの保身のためにそのマインドセットを潰そうとすることをしてはいけない、若者のやる気を削ぐようなことをしてはいけないという意識を持つことが鉄則だと思います。そうしていれば、自然の法則に従った、当たり前の新陳代謝が生まれて来るのではないかと思います。特に、大企業で働いている人たちは、若者のやる気を削がないよう、自らを戒めて欲しいと思いますね。

谷本:では、やる気を削がないために実際にされていることはあるのでしょうか?

三苫:僕の場合は「新しい舞台」を考えるのではなく、現在働いている既存の社員に新しいアプローチを考えてもらうような人材教育を心掛けていきたいと思っています。そして、現在遂行している事業はまだまだ未完成で、改革の余地が山ほどあるという意識を持つ社員を育てていく必要があると思います。さらに言えば、そうした意識を育てようとする考えに邪魔を入れない経営陣を育てる事も大切になってくるのではないかと思っています。

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楢﨑:保険会社を含めて金融機関はもともと保守的な業界です。では、そのコンサバ組織をどうするのか、その実現にはポジティブな意味で壊すことをプロジェクト化する必要があるのではないかと思っています。イノベーションは「指示待ち社員」のマインドを変えるのではなく、改革をミッションと考えて行動する人材を応援して育てることから始まると思っています。そうしたマインドセットを下に成功したプロジェクトもたくさん生まれてきていますしね。
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文=賀陽輝代 グラフィックレコード=三瓶聖奈

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