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左から、ANRIの河野純一郎、アップサイダー代表取締役宮城徹、DNXベンチャーズの倉林陽、グローバル・ブレインの立岡恵介

成長速度に見合った管理体制構築のサポート機能がついた、ベンチャー企業を対象にした「上場のための法人カード」が生まれた。

宮城徹が代表取締役を務めるアップサイダー(UPSIDER)は2020年7月、(1)1000万円〜1億円の高い利用限度額、(2)月次決算に漏れや遅れが生じない、(3)部門・使用用途別に発行・明細管理可能、(4)不正利用の防止機能・補償付き──という4点を特徴にした法人カードサービスを開始した。すでに上場企業を含むベンチャー企業を顧客に持ち、事業資金の支払いが月に数千件規模で行われているという。

同社は、マッキンゼー・アンド・カンパニーのロンドン支社に勤務していた宮城徹と、ユーザベース出身の水野智規が18年5月に創業、モルガン・スタンレーのロンドン支社でエンジニアをしていた澤田遼多がCTOとして創業直後に参画。伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、BASE Partners、新生銀行、AGキャピタル等からの資金調達に次いで、20年6月、ANRI、DNX Ventures、Global Brainから資金調達を実施し、さらなる成長へのアクセルを踏む。

スタートアップのカード決済にある問題


宮城たちが取り組むのは「法人カードが成長や上場の足かせになっていないか?」という問いだ。それに対して、事業成長、ガバナンスという2つの点で答えを出すという。

「カード会社の限度額と成長速度が見合わないケースが多い。例えば、多額の広告費を用いて勝負を仕掛ける際に、画一的な与信審査での限度額では足りない。また、限度額が足りないため、サーバーが停止してしまい機会損失につながっているケースもある。我々の利用限度額は最大1億円までカバーしており、ベンチャーでも安心して勝負がかけられるようになる」(宮城)

もう一つは、決算漏れ、代表者保証、不正利用といった「上場準備の課題」の解決だ。

「従来の法人カードでは、明細確定まで時間がかかることによる、月次決算の漏れ、遅れがあった。また、複数人で決済することにより使途不明な明細が生じたり、予算を逸脱した利用や不正利用が起こるという管理上危険なリスクがあった」(宮城)

アップサイダーは、取引をウェブ上で一括管理することができる。部門や利用者ごとにカードを分けられ、使途がすぐに確認できるほか、発行したカードの破棄やロック等のリスク制御も、ウェブ上で即時行うことができる。また、翌月1日には当月分の取引を全て取り込むことができ、明細も揃った状態になることから、企業の月次決算への遅れや漏れが解消される。また、代表者保証がないため、上場前の切り替えが不要な点も特徴だ。

宮城の問題意識は、前職のマッキンゼー時代にさかのぼる。当時、金融機関に対するコンサルタント業務を行っていた宮城は、低金利に合わせてコスト削減を行う旧来の銀行とは対照的に、顧客視点で新しい決済システムを作成していったチャレンジャーバンクにユーザーが流れていくのを目にした。

銀行のAPI公開が進み外部アプリケーションとの連携が進んでいくなか、宮城は法人間決済が金融機関の担ってきた領域の中で、最大規模で変化していく分野であると考えている。顧客ごとの需要の違いも他分野に比べて少なく、市場としても一法人単位で見たときも与える影響は大きいからだ。宮城たちは、まず「法人カード」サービスから展開していくという。

「台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業がディスプレイ製造に参入してきた時に似ている。電子機器メーカーが垂直統合で独占していた事業が水平に分かれていく転機になった。金融業界はいまその流れの渦中にある」

文=揚原安紗佳、写真=帆足宗洋

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