クラシック演奏会のオンライン生配信に感じた、未来への可能性

オペラ歌手・松本美和子さんの「落葉松」(ピアノ・椎野伸一)(c)三浦興一

オペラ歌手・松本美和子さんの「落葉松」(ピアノ・椎野伸一)(c)三浦興一

新型コロナウイルスの影響で休止していたクラシックの演奏会が、少しずつ再開しています。会場は座席を減らし、マスクの着用などに気をつけ、緊張感でいっぱいです。海外アーティストの来日公演は、難しくなりました。そんな中、注目されているのが、オンラインの動画生配信・ライブビューイングです。筆者も「リビングルーム券」を購入し、チャリティ演奏会を視聴しました。

延期された演奏会をオンラインで


オペラ歌手やピアニストなど、多数のアーティストが所属する「ジャパン・アーツ」は8月、会場での公演を再開しました。それとともに、本格的な動画生配信に踏み切りました。

筆者は8月31日、東京オペラシティコンサートホールで開かれた「東日本大震災復興支援チャリティコンサート」の「リビングルーム券」(1500円)を購入し、タブレットで視聴しました。

2011年3月11日の東日本大震災の後、阪神淡路大震災を体験した社員が提案し、その年から毎年開いてきたチャリティコンサート。被災した子供たちの進学支援のために、収益の一部と募金を寄付してきました。有名アーティストが、ほとんどボランティアで出演しています。

これまでに4千万円近くを寄付し、オルガンや電子ピアノを学校に送った年もありました。今年は10回目で、3月に開催するはずでしたが、自粛要請により延期していたものです。

申し込みや、カード支払いは、ウェブですぐにできました。どのアドレスから入れば公演が見られるのかはわからず、メールで問い合わせしました。数日前に、改めて案内がありました。

タブレットでも楽しめる臨場感


当日は、タブレットを用意してログイン。チャットの機能があり、演奏の感想や「ドレスが素敵ですね」といったコメントを書き込む観客もいました。電話での問い合わせも可能で、パソコンに弱い人にも配慮されています。

クラシックの演奏会は通常、音響の良いホールで、空気の振動や、演奏者の呼吸感も含めて楽しみます。オンラインでは、そこまで感じるのは難しいですが、タブレット画面を通しても、十分に伝わるものがありました。

例えば、オペラ歌手・松本美和子さんの「落葉松」は、長い人生の経験が詰まった歌声でした。取材を通して交流のあるピアニスト・仲道郁代さんは、被災地の学校訪問を続けていて、思いが感じられる「月の光」です。バイオリニスト・千住真理子さんの「シャコンヌ」は、ストラディバリウスの重厚な響きに引き込まれました。


ピアニスト・仲道郁代さんの「月の光」(c)三浦興一
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文=なかのかおり

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