中国に対する強硬姿勢はトランプ大統領の選挙政策の1つでもあるが、政権メンバーにも耳を貸さないトランプが、民間企業の提案を受けて発動を撤回したことはとても珍しく、大きな話題を呼んでいる。
若年層には薄い中国への敵対意識
TikTokは中国のByteDance(バイトダンス)社のモバイルアプリで、ユーチューブの中国版と言う人もいる(ただ、動画は15秒しか投稿できず、視聴者数が増えると投稿枠が延長するなど仕組みは違う)。アプリは中国本土版と海外版の2種類があり、互いの動画は棲み分けされて混在することはなく、フィルターの種類など機能にも差がある。
TikTokがユーザー情報をはじめ、アメリカの各種データベースに不正アクセスできる環境になっているとして、国の機密情報が保たれないことを理由に、トランプ大統領は昨年から利用制限をかけてきた(ちなみに日本でも、自民党のルール形成戦略議員連盟が利用制限議案を近々に国会提出する方針だ)。
まず、陸海空軍でのTikTok利用を禁じ、その後、連邦政府職員の多くの部署で、使用禁止を拡大した。さらに個人情報の漏洩に対策を打てていないとして、TikTokに個人情報取扱に関する法令違反として約6億円の罰金を科した。
そして、トランプ大統領は全面禁止へ向けて攻撃を加速、9月20日を境として、このアプリは米国でダウンロードすることはできなくなり、既存ユーザーもメンテナンスや更新版を受けられなくなるところだった。
しかし、今回、オラクルとウォルマートが、TikTokのアメリカオペレーションを新会社化し、そこに両者が合計して20パーセントの資本を持つことでコンプライアンスが守ることができるとトランプ大統領に進言した。
特に、オラクル社のクラウドサーバーを使うことを合意させることで、中国のスパイ行為や不当な情報収集を監視やブロックできるとして説き伏せた。これを受け、トランプ大統領は報道陣の前で、「まったく別なオペレーションになるだろう。強烈に警備されているクラウドサーバーを使うので、もう安心だ。もう中国政府とは関係ない代物だ」と上機嫌に語った。