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ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信

Justin Sullivan/Getty Images

世界最大の小売り業者であるウォルマートは、今月から新しい会員サービス「ウォルマート+(プラス)」をキックオフすると発表した。これは、圧倒的な利便性と安価で顧客を囲い込む、アマゾンに対するあからさまな逆襲ではないかと、全米で話題が沸騰している。

ウォルマートプラスは、アマゾンプライムと同様のサブスクリプション(継続課金)型。現在はアマゾンプライムが年間119ドルのところを、ウォルマートプラスは98ドルと、わずかに料金を安くしている。

アマゾンに挑むなど、少し前なら、無謀で怖いもの知らずと思われていた。しかしウォルマートは、今回3つの戦略を用意して、アマゾンに挑戦状を突きつけたのだ。

即配と生鮮食品で優位に立つウォルマート


アマゾンは、コロナ禍によって、リアル店舗を抑えて圧倒的に売上を伸ばし、株価を爆発的に増大させたが、ここにきて弱点を露呈していた。配送体制が追い付かなくなり、約束した配達日に間に合わないケースが増えてきたのだ。これは、配送人不足の問題だけでなく、配送センターの改組中に、在庫をどこに置いておくかという問題でもあった。

一方、ウォルマートは、全米に約5万カ所もの圧倒的な店舗網をもち、そこに在庫も保管している。商圏を約17キロでとれば、この店舗網は全米住民の9割をカバーしていることになり、リアル店舗をほぼ持たないアマゾンと比べて、はじめから強烈に優位に立っている。つまり、アマゾンより早く、かつ確実に届けられるという体制が既にできているということだ。

ここにウォルマートプラスの1つ目の戦略がある。この体制によって、ほとんどの全米の都市で商品の即日配送を実現できる。これほどの規模での即日配送はアマゾンにはできないだろう。

次にウォルマートが狙うのは、コロナ禍で特に需要が高い生鮮食品のオンライン調達での優位性だ。

アマゾンも、アマゾンパントリーというプログラム(サイト)を使った食料品を配達する仕組みがあるし、買収した高級生鮮食品スーパーマーケット「ホールフーズ」のリアル店舗から生鮮食品を届けられるようにアレンジしている。

しかし、ホールフーズは、オーガニックなどの高級食材に特化しているぶん、ウォルマートの汎用性や商品の充実度にはまったく敵わない。しかも、全米には店舗が480しかなく、しかも都市部に集中しているため、消費者がアマゾンで生鮮食品を買う動きはなかなか大きくならない。

そこへきて、ウォルマートは、コロナ禍でネットショッピングを前年の倍に伸ばした。元々勢いがあるところに生鮮食品が加わることで、アマゾンに脅威を与えられる。これが2つ目の戦略だ。

また、今後、ウォルマートは、全店舗に会員専用のスマホ決済できるキオスクを置く計画だという。これは、従来の有人レジや、セルフレジに加えて、会員だけ自分のスマホで決済ができるようにすることによって「レジ並びゼロ」を実現。時短を叶えることになる。

消費者はスーパーマーケットに通って買い物すること自体をまったくなくすことはできないので、このファーストクラスの乗客だけ先に飛行機に搭乗させてもらえるような優越感は、インパクトがある。これが3つ目の戦略だ。

即日配送、生鮮食品、リアル店舗でのレジ待ちゼロ、ウォルマートが打ち出したこの3つの戦略は、確かにアマゾンが当面は対処できないものなので、画期的であり、注目も浴びるはずである。

文=長野慶太

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