獣医師が考える「人間と動物のつながり」

Stefan Cristian Cioata / Getty Images

前回のコラムでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の身近なペットへの影響について報告したが、今回はその続報を紹介したい。

元々、野生動物からもたらされたと考えられる新型コロナウイルス感染症が、人と動物を往き来する、「人獣共通感染症」であることは間違いない。そこで、最も身近なペットと人の間でうつし合うことはないのか、また家族の一員でもあるペットに致命的影響はないのか、そんな疑問も当然浮上してくる。

前回は、米国の科学誌「Science」に掲載された中国での研究成果から、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染する身近な動物種として、特にネコとフェレットが挙げられていることを紹介した。また、感染者の飼育するネコで感染が判明したという欧米での複数の報告もあり、ペットとしてはネコが要注意という印象を与えたように思う。

しかし、この8月までに、感染者が飼育していたイヌに感染が判明した海外での複数の事例や、日本国内においても、同じく感染者が飼育していたイヌ2頭で、PCR陽性判定が出たという報道があった。

感染する動物種の特定には、科学的な研究が必要であるが、これらの事例からは、ネコのみでなく、イヌ、さらにまだ報告のない他のペットへの感染拡大も留意すべきことがうかがえる。

イタリアで行われた興味深い調査


人から、そのペットであるイヌやネコへ感染が広がった事例は複数報告されているが、逆にペットから人へ感染したという例は、現在のところ確認されていない。また、人から感染したと考えられるイヌやネコにおいては、ほとんどが無症状であることも報告されている。

以上のことから、うつし合いはないのか、感染したペットに健康影響はないのか、という心配は少し軽減できるのではないかと思う。しかし逆に考えると、無症状ゆえに、人がペットへ感染を拡大させていても、その実態はわかりにくいという側面もあるだろう。

そこで、7月に発表された、ペットにおける流行状況を把握する足がかりとなる、興味深い調査報告を紹介したい。それは、多くの感染者を出したイタリアにおいて行われたペットのイヌとネコにおける大規模な疫学調査の結果だ。

調査は、今年3月から5月にかけて、イタリア北部に住むイヌ540頭とネコ277頭を対象に実施された。新型コロナウイルス感染症に関して、特定の地域を丸ごと対象にしたこのような大規模な疫学調査の試みは初めてではないかと思われる。

対象のイヌとネコは、動物病院を健康診断などで受診しており、一部に呼吸器症状を示したものも含まれていたが、多くは見た目上健康な個体で構成されていた。これらに実施したPCR検査では、陽性を示すイヌとネコはいなかったが、抗体検査では、イヌの3.4%、ネコの3.9%で陽性の結果が得られたという。

このうち特に、背景の明らかなイヌ180頭とネコ60頭の抗体検査の結果を見ると、新型コロナウイルス感染者が出た家庭で飼育されていたイヌの12.8%(47頭中6頭)、ネコの4.5%(22頭中1頭)が陽性であった。対して、新型コロナウイルス感染者のいない家庭で飼育されていたイヌの陽性率は1.5%(133頭中2頭)、ネコは2.6%(38頭中1頭)であったという。

文=西岡真由美

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