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2020.09.03 08:30

ソーダストリームが呼吸補助装置を開発 イスラエル「平和を叶える島」で

ソーダストリームの工場で働くユダヤ人のヤコブ(右)と、パレスチナにあるシュアハット難民キャンプ出身のマハムッド(左)

「戦争ではなく炭酸水を作ろう(Make soda not war)」──。パレスチナの地を巡る紛争が続くイスラエルに、こんな標語を掲げる企業がある。家庭用炭酸水メーカー市場で世界一のシェアを誇るソーダストリームだ。ペプシコ傘下の企業で、世界46カ国において商品を展開している。

新型コロナウイルス感染症の影響で、「おうち時間」の相棒として日本でも人気が高まるソーダストリーム。イスラエル南部にある主力工場では、ユダヤ人とパレスチナ人、アラブ系遊牧民ベドウィンが人種や宗教の違いを越えて、協業しながら製品作りに取り組んでいる。

そして同社はいま、新型コロナから人々の命を救うためにさらなる挑戦を始めた。呼吸補助装置の開発だ。炭酸水製造機を手がけるイスラエルの企業がなぜ、呼吸器の製造に乗り出したのか。始まりは1本の電話だった。

「技術がパーフェクトにマッチ」


ソーダストリーム代表取締役のデイビッド・カッツ氏は、その日のことを鮮明に覚えているという。新型コロナ感染の第一波がイスラエルを襲った3月某日、本社の電話が鳴った。電話の主は、エルサレムにあるハダッサ・アインケレム病院のアキヴァ・ナクション上級医だった。

実はその数日前、カッツ氏はソーダストリーム・インターナショナルのエヤル・ショハットCEOにメールを送っていた。内容は、「人工呼吸器が不足しているいま、ソーダストリームの技術力を生かして手ごろな呼吸補助装置を開発できないだろうか」というものだった。

「面白いことに、2、3日後にハダッサ病院から連絡が来たんだ。『新型コロナに立ち向かうために手を貸してほしい』と」(カッツ氏)


ソーダストリームの製造工程の様子

ソーダストリームは、加圧したシリンダーから水が入った専用のボトルに二酸化炭素を注ぎ込むことで飲用炭酸水をつくる。機器に用いられているシリンダーと専用ボトルの接合技術や、流量などをコントロールする方法などが「呼吸器の開発にパーフェクトにマッチすると彼らは信じていた」(カッツ氏)。

そこからは早かった。ナクション上級医とソーダストリームの研究開発責任者アヴィ・コーエン氏はその日のうちに設計のたたき台に着手。ソーダストリームの専用ボトルを用いてプロトタイプを作成し、数週間で呼吸補助装置「Stream02」を完成させた。


ソーダストリームがイスラエルのハダッサ・アインケレム病院と共同で開発中の呼吸補助装置「Stream02」

StreamO2は空気と酸素を混合した気体の温度を調整しながら、高湿度で患者の鼻に送り込むことができる。挿管するタイプの人工呼吸器よりも手軽に使えて、価格も手ごろなのが魅力だ。新型コロナ感染者のなかでも、自力で呼吸できる軽度から中等度の患者の治療に適しているという。

製品の需要と緊急性の高さを鑑みて、イスラエルの保健省はすぐに臨床試験を承認。現在は病院の一般集中治療室で、40人の患者に対して有効性や安全性を確認する試験が行われている。
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文=瀬戸久美子

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