コロナ禍によって、とうとう航空業界の悪しき文化が変わるかと大きな話題となっている。
事実、翌週には、あっという間に、アメリカン航空、デルタ航空、アラスカエアライングループ、ハワイアン航空が、これに続いた。
ペナルティをなくすという戦略
航空業界は、コロナ禍によって乗客を極端に失った。先日、アメリカン航空が4万人のリストラ策を発表し、デルタ航空も1900人のパイロットに長期無給休暇を命じるなど、顧客の劇的な減少は、経営に深刻な影響を及ぼしている。
ユナイテッド航空のカービーCEOが自らユーチューブで語ったように、これまでの航空業界は、原油の高騰やリーマンショックなどの業界が危機に陥るたびに、料金を値上げするか、表には出にくい費用(燃料費やチェックイン荷物の預かり料をマイレージ会員の階層ごとに変える)を取るなどして会社の生き残りを図ってきた。
しかし、今回は事情が違う。これまでの生き残り戦略は、各社との競争に勝ち、顧客を呼び込み、なおも利益を薄めないための試みだったわけだが、奪い合う「顧客」そのものがいなくなってしまったのだ。
こうして、コロナ禍で減った顧客に飛行機に乗ってもらうために、いままでにないアプローチをしなければと、ユナイテッド航空は、CEOの首まですげ替えて「ユナイテッド航空は、フライト変更手数料を永久に取らない」というドラスティックな戦略変更をしたのだった。
実際、「変更手数料」とはいうものの、乗客にとっては「ペナルティ」という意識のほうが現実に近いだろう。飛行機のチケットは、ポータルサイトから格安で購入しても、ペナルティがあるために旅行の準備そのものがやりにくくなっていた。
しかも、コロナ禍によって、乗客はチケットを買った時にはなかったルールにより入国ができなくなったり、入州できなくなったりもしている。前もってチケットを買ったとしても、それを無駄にする怖さがある。
今回のユナイテッド航空の決断は、こうした一切のペナルティを「なし」にすることで、コロナ禍によるスケジュール変更を恐れることなく、どんどん旅行の計画を立ててくれとアピールしたものだ。ただちに大手航空会社が続いたところを見ると、この戦略は(まさか談合していない限り)まっとうなものだということが証明された。
しかも、変更ペナルティだけでなく、搭乗当日のスタンバイでもっと早い便に変えてもらう、あるいは搭乗の当日に予約なく上級席にアップグレードするなど、いままではなにかと課されていたその他のペナルティも排除することになった。
大きなパイを取り合うという競争から、いまはなくなってしまったパイを再び大きくするという戦略に変更したというわけだ。