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地方発イノベーションの秘訣

紙の申請書とオンライン申請画面

先頃誕生した新内閣の目玉政策として、2021年秋までに「デジタル庁」を新設する方針が打ち出されたが、裏を返せば、それだけ行政のデジタル化が遅れているということだろう。

国民1人当たり10万円を支給した「特別定額給付金」の申請では、1709の自治体で始まったマイナンバーカードによる申請を、100以上の自治体が途中で止めてしまった。

実は、自治体の職員は、インターネットでなく窓口でやり取りしたほうが手っ取り早いと思っている。ショッピングなら、クレジットカードの支払いさえあれば、指定の住所に商品を届ければ済む。ところが行政は、補助金などの規定に沿っているか、それを証明する書類が付いているのか、本当に本人が申請したのかを確認しなければならない。

規定外での不備申請に手間が掛かるだけでなく、虚偽のおそれさえあるからだ。なので、対面で1つずつ確認しながら受け付けるのが一番だと考えている。

オンライン申請で記載項目が半減


そんななか神戸市は、コロナ禍の外出自粛で売上減少に苦しむ中小企業の家賃軽減や、新しいチャレンジを後押しする補助金の申請に、オンラインでの手続きを導入。すると、チャレンジ補助では全申請8482件のなんと84%もが電子で行われた。

このオンライン申請の仕組みを担ったのが、東京本社で神戸にもオフィスを置く「グラファー」というスタートアップだ。なぜ、これほどまでにオンライン申請が使われたのか。2017年に同社を共同創業し、現在、取締役COOを務める井原真吾がその理由を次のように明かす。

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グラファーの共同創業者/取締役COOの井原真吾

井原がまずオンライン申請で「必要がない」と思ったのは、紙の申請書の右上にある「日付」欄だったという。普通は書いた日か窓口に持って行った日を記入するが、電子なら送信した日時が記録されるので、真っ先に不要となるからだ。

このようにして紙の申請書から審査に必要な項目だけを精査。その結果、約40あった項目はなんと半減した。井原の会社グラファーは、補助金について問い合わせに答えるコールセンターや審査業務も受託したので、仕事を円滑に進めるためにもシンプルにしたかったという。

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紙の申請書では必要だった日付欄

その一方で、神戸市の担当者らもまた、添付書類を減らそうと工夫を凝らした。例えば、家賃補助なら「賃貸借契約書」がいると誰もが思うだろう。ところが、契約書はページ数も多く、何十年前の契約となると契約書自体が残っているかも怪しい。

そこで、オーナーとテナントの「合意確認書」の様式をダウンロードして、両者が押印したファイルを送ってもらうことで、こと足りることとした。神戸市の担当者は、「他の自治体では10以上の添付書類が必要になることもあるなかで、神戸市では制度づくりと並行して、オンライン手続きを進められたことがとても大きかった」と話す。

さらに、オンライン申請を途中であきらめてしまう理由に、申請者が必要な添付データが揃っていないうちに手続きを始めてしまうことに着目した。そこで、最初の画面で、「本人確認書類」と「直近の確定申告書」など必要となる書類のファイルを、スキャンや写真で準備するように案内した。

文=多名部重則

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