三和交通がネット上で話題となるのはこれが初めてではない。ドライバーが黒スーツとサングラス姿で送迎する「SP風TAXI」や、霊が出ると噂される現場をドライバーの解説付きで巡る「心霊スポット巡礼ツアー」など、タクシー会社らしからぬ「ぶっ飛んだ」企画がたびたび注目され、ファンの心を鷲掴みにしている。
なぜこのような取り組みを行うのか。三和交通広報部の小関正和さんと和田茉璃奈さん、乗務員の苅部俊哉さんに話を伺った。
10年後には運転手がいなくなる?
──タクシー会社とは思えないユニークな公式SNSでの発信が話題になっています。どんな目的で始められたのでしょうか?
和田茉璃奈(以下、和田):実は若い世代への「採用活動」をいちばんの目的に始めました。
タクシー業界は、従業員の年齢層が高く、現在は50〜60代が中心。このままだと10年後には主力なドライバーたちがほとんど引退してしまって、人材不足に陥る危険性が、業界全体で強く問題視されています。
「タクシー会社は定年後に入るもの」というイメージや、硬い・怖いなどのネガティブな印象を一新して、若い世代に「働いてみたい楽しい職場」だと思ってもらいたい。ぶっ飛んだ企画やSNSを通して、三和交通に興味を持ってもらい、検索してほしい。その入り口になればと、2013年からSNSでの発信を始めました。
現在は、TikTokやTwitterなど多くのSNSを運用しているのですが、YouTubeでは、私たち広報部社員が「まーちゃん」「KOOちゃん」の愛称で出演。会社の取り組みを紹介するだけでなく、「〇〇をやってみた」など、一見会社と関係ない企画にも挑戦しています。
ちなみに、私が激辛のインスタント焼きそばをただ食べるだけの動画は、再生回数1.3万回にも伸びました(笑)。
写真左の「まーちゃん」、中央の「KOOちゃん」は広報部の和田茉璃奈さんと小関正和さんだ(三和交通公式YouTubeより)
三和交通のタクシー会社としての強みは、採用ホームページや説明会でアピールすればいい。とにかく、どんな手を使ってでも、三和交通で働くスタッフの素顔を皆さんに知ってもらいたい。その一心で、毎日タクシー会社の広報とは思えない仕事を頑張っています。
──三和交通さんが打ち出していらっしゃるタクシーのツアー企画も本当に個性的です。「タクシー会社らしくない」強烈さですね。
小関正和(以下、小関): SNSだけでなく、タクシーを利用したユニークなツアー企画も行っているのですが、これらもすべて、最終的には採用につながることを意識しています。
現在は、期間限定の企画も含めて、常時計10種類ほどのツアーを実施しています。霊が出ると噂される現場をドライバーの解説付きで巡る「心霊スポット巡礼ツアー」や、ドライバーが黒スーツとサングラス姿で送迎する「SP風TAXI」、忍者の格好をしたドライバーがござる口調で話す「忍者でタクシー」などが人気ですね。