よく「タクシー会社らしくなくて、面白いね」と言われますが、実はこうした企画のほとんどは、タクシー運転手だからこそ生まれたアイデアなんです。
例えば、2015年から夏に毎年運行している「心霊スポット巡礼ツアー」。この企画で巡る心霊スポットは、乗務員が実際に不思議体験をした場所をヒアリングして決めています。毎日仕事でさまざまな道を走っているからこそ、恐怖体験を聞いてみるとポンポン出てきて驚きました。
また、タクシー運転手の多くが中途採用で入社していることから、転職前の職場の経験を生かした企画もあります。
「カメラバカドライバーと行くツアー」では、元写真教室講師や広告・映像制作の経験のある乗務員が、写真スポットを案内しながら撮影の仕方を教える、というもの。
タクシー運転手は地域を知り尽くしているだけでなく、前職も多種多様。経験豊富な彼らだからこそ、ユニークな企画が実現できるというわけです。
──こうしたツアー企画やSNSの発信によって、「三和交通って面白い!」「取締役の踊る姿が可愛い」など、大きな反響があったかと思いますが、本来の狙いとしていた採用面での効果はいかがですか?
和田: 実際に、企画やSNS運営に力を入れ始めてから、新卒採用への応募人数は急増しました。10年前に新卒採用を開始した当初は、例年2〜3人ほどでしたが、現在では20人近くにまで伸びています。
苅部俊哉(以下、苅部):私も転職で乗務員になったのですが、入社前に三和交通の奇抜な企画やSNSを知って、普段の丁寧な接客とのギャップ萌えといいますか(笑)、いい意味でぶっ飛んでいる面に好感を持って入社を決めた1人です。
いまでは、前職の電気量販店の接客で培った知識をもとに、「カメラバカドライバーと行くツアー」の運転手も任せてもらっています。これまでの経験を生かせることはやりがいになりますし、何よりすごく楽しいですね。
元デザイナーの社長によるアイデアが爆発
──多岐にわたるユニークな取り組みですが、誰が発案しているのでしょうか?
小関:ほとんどが代表取締役社長の吉川永一による発案です。
吉川は、現在43歳で、2003年に三和交通に入社。それまでは、音楽のプロモーションビデオを作成するなど、フリーランスのデザイナーとして働いていました。
吉川のこうした職歴とデザイナーならではの柔軟な発想が、「タクシー会社」という枠を飛び越えた企画を生み出す源泉なのかもしれません。実現不可能な無茶振りも多いので、広報部としては困ることもあるんですけどね(笑)。
和田: SNS運用もほぼすべて吉川の提案です。彼はアイデアを出すだけではなくて、周りを巻き込むことがとても上手いんですよ。
私も元々は、配車センターのオペレーターをしていたのですが、吉川に声をかけられて、いまや動画で激辛焼きそばを食べることに……(笑)。
当初は、動画の企画も撮影も編集も未経験だったので抵抗もあったのですが、あれよあれよと吉川の勢いに流されて、勉強を始め、いまではすべての動画編集を任されるようになりました。