コロナ時代のカルチャーはアップデートされていく
今回のコロナ禍をきっかけに、改めて現場の大事さを感じています。特にクラブミュージックは、ちゃんと鳴るスピーカーなど、音響がしっかりとした環境で体験することで、良さが分かるようになるジャンルです。でも形を変えても私のいるジャンルのDJの文化はなくならない気がしますね。一時的にDJができなくとも、それぞれの形で音楽を発信したり聞き続けていると思います。
一方で、みんなが名前を知っているわけではないけれど、国内外で沢山の現場に立つことで生計を立てている、シーンの中では非常に重要な、アンダーグランドのDJも沢山います。クラブなどの現場を経営する人と、そういう人たちがおそらく一番早く経済的ダメージを食らったと思います。
今の課題は制限があるからこそ面白いものを手当たり次第実験していくこと。オンライン等自宅で聞くことになれば技術の進歩も大きく関わってくると思いますが、すぐできることとして、現場の魅力をどうオンラインに落とし込んでいくかを考えました。そのためにもう一度「なにが楽しくて行っていたのか」を考えてみた結果、音楽的体験や身体的な体験の演出以上にコミュニケーションが自分にとって大事だったと気づきました。
クラブの現場って“サロン”的な要素があって。好きな音楽を媒介に色んな仲間や新しい人が集まって、適当に話したなかで問題が解決されたり、考えが更新されたりする。オンライン配信一つとっても、DJを撮影したものに、みんなが見るまでのストーリーを付随したり、コミュニケーションを起こすきかっけを作ることなどはすぐに実行できました。
また、人数や場所の制限も逆手にとって特別なものにしていくことは可能です。クラブカルチャーだけに限らずエンタメ業界全体が試行錯誤の時なので、アップデートされていく表現方法は楽しみでもあります。
10年で新たなスタートラインへ
個人的にはやっと10年でまたスタートラインに立ったみたいな感じ。規模に関わらずLicaxxxの音をちゃんと理解して色んなところに呼んで頂けるようになったり、純粋にリスナーが増えたり、ちゃんと自分の音楽を続けられている実感があります。替えが効かないというか。あとは、私みたいなアーティスト自身がハブになる事例ってあればある程いいと思うんです、それはシーンの成長につながると思います。
でも、それが成功していると示していくには、結局続けていくことが一番大切で。ここで私がぱったり辞めたら、こんな人もいたね、今何してるんだろう、で終わるだけなので。自分が死んだ後も、私たちが沢山残した時代の音楽を楽しんでくれたり、次の世代からまた新しいDJたちが生まれ引き継がれていく、など脈々と続いていくことを望みます。なので、この先10年も基本的にやることは変わりません。音楽を聞いて、現場でいっぱい遊んでDJして、じんわりダンスミュージックに興味がある人が増やすための活動をしていくだけです。
先のことは全く予測できない時代なので、もし仮にLicaxxxという名義が活動する必要がなくなる時が来るかも分からない。でもそうなっても自分が完全に隠居するということはないと思います。名前はでなくても、現場の友達とみんなで多分同じようなことを楽しくやっているって感じだと思います。手を変え、品を変え、その時々の試行錯誤しながら遊んでいきたいと思います。
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