活動の目的は、遊び場を成長させること
DJ歴10年と聞くと結構長く感じますけど、私の憧れるDJの先輩を見れば20年以上続けている方も多く10年なんてのは正直珍しくないです。私のいる、私の好きなダンスミュージックのジャンルでキャリアがあるということは、流行ではなくカルチャーにしっかり根付いているという認識なので、DJとして信頼を得るには音楽愛に基づく時間や経験が不可欠で、一瞬でできることではないと思います。インターネットをちょっと掘ればDJという行為はできるけど、カルチャーからの信頼を得るというのは膨大な知識量と経験値に基づく技術力が合わさってなされるものだと思います。
キャリアと言う観点で言えば、会社に入った頃から言い続けていますが、自分だけが“有名なDJ”として前にでていることには全く興味なく、意味もないと思ってます。それは、自分の活動目的が自分が遊んでいる場所を育てていくための活動だから。私のいるシーンは国内だと、別の仕事しながらDJをやっているのが普通です。
みんな、お金を稼ぐためにDJをやってるわけじゃなく、やりたい音楽をやっている。ただ、世界を見ると同じアンダーグラウンドさを保ちながらファンの母数が大きいため、国内よりも経済が動いているという状況もあります。
なので、“世代”(年齢ではなくどのようなクラブ遍歴を持っているかによる便宜的な区切り)やシーンの見せ方を意識してきました。ムーブメントとして起こっていることの一部としてLicaxxxがいるだけであって、シーン自体が活発でポジティブに認識されることに意味がある。単純に、一人で知らないとことに呼ばれて行くより仲間のDJとワイワイやったほうが楽しいと言う感覚ですが。
また、日本で職業がDJと言うとまだまだ“億万長者のスーパーDJ!”みたいなアッパーなイメージが先行していると思いますが、DJの中にも多様なジャンルがあり、文化系な仕事をするDJも職業として成り立っているように見せることも意識的にやっています。内容を伴った上で憧れられるというのは今後の繁栄に大事なことだと思います。先陣を切って色々なパターンを提案し、カルチャーをあらゆる方向で持続可能かつ耐久力のあるものにしていきたいです。
自分はクラブカルチャー以外のコミュニティ(音楽に限らず)とも接点が多く、クラブカルチャーにまだ触れていない人への翻訳的機能をしたり、そういう外交的な役割を果たしていることも特徴の一つだと思います。しかし、それは沢山クラブで遊んで現場に立ったという経験が後ろ盾となり出来たことです。好きなことだからこそ感じますが、突発的に有名になって広めたり、現場を知らない人がテコ入れできるものではない。
結果として、好きなクリエイターに予算を付けて仕事をしたいという理由で広告代理店を目指していた客観的な自分と、現場に立ち現場で遊ぶDJであるという当事者の2つの顔があってこそ体得できたバランスだと思います。これはどんなカルチャーにおける経済活動にも言える、基本的な要素だと改めて思います。