新型コロナウイルスへの対応で、今年は特に、組織・仕事の現場にも多くの変化が促されることとなった。大きな影響を受けたことの一つは、働き方だろう。
多くの組織が、多様性に対する考え方を試された。オフィスという、ある種、企業が社員にとって平等な体験を作り出す装置が止まり、在宅勤務が増えたことで、働く環境が一気に多様になった。この多様性を認めることで不平等が生じないようにどうすればいいか、マネジメントは考えなければならない。
例えばIDEO Tokyoでは、最低限の在宅勤務ツールを揃えるための補助を出しており、地域によっては高速回線のネットワークを導入するなどの支援もした。また働き方に関しても、それまでの当たり前を変える必要があった。子供に手が掛かる昼時のミーティングを避けるようにしたり、共働きで子供のいるデザイナーは勤務体系を変更し、土曜日を出勤日、月曜日を休みにすることで家庭内のシフトを構築した。
小さな工夫に思えるかもしれないが、その全てがマネジメントからすれば組織の文化や、人事制度に関する常識をアップデートする大きな意思決定だ。企業によっては在宅勤務自体の導入が困難な場合もあるが、現在のような状況こそ企業の美意識と、掲げている「あるべき姿」が試されている。(後編に続く)