ただ、コロナ禍になる前から多くの企業研修でお伝えしてきたのですが、外からの強制力で起きようという発想自体を変える必要があります。24時間は自分でマネジメントするもので、睡眠や活動のリズムは自分自身で作っていくものです。
脳には、朝起きてハイパフォーマンスになり、昼過ぎにローパフォーマンスになり、夕方にまたハイパフォーマンスになり、夜にローパフォーマンスになるというように、二山あります。
起床4時間後は一番脳波活動が活発な時間ですが、そこで重要な作業ができるようにするには、起床時間を自分でコントロールしていかなければいけません。
多くの企業の研修で、社員の睡眠の記録を取ると、就寝時間は揃っていて、起床時間がばらばらというリズムが多くみられます。平日は大体0時や2時に寝て、週末に寝だめをしている。
脳は、起床時間がそろわないと就寝時間が揃わない仕組みなので、就寝時間にはあまりこだわらず、休日と平日の起床時間をなるべく一致させてみてください。
それができると、前後評価をすると生産性が約10パーセント上がったという人もいました。脳にとって、起床時間をそろえるのは非常に重要なことだということが、あまり知られていないようです。
早起きをしないと早寝はできないのに、「早寝早起きがいい」と習ってきたので、生活リズムを整えようとすると、就寝時間をそろえようと思うのです。就寝時間をそろえようとしても、眠気が来なければ揃うわけがありませんよね。
科学的根拠もなしに、「早く寝て睡眠を取ることが大事」という道徳観を教わってきましたが、睡眠時間を操ることは習って来なかった。脳にとって重要なのは、「早起き早寝」なんです。
起床時間が3時間以上ずれると、メンタルに不調をきたしてきます。そのため、起床時間を3時間差以内にすることが、メンタルヘルスの最初の目標になることが多いです。
脳に限らず、なんとなく心が疲れていると感じる人は、まず起床時間をそろえることから実践してみてください。
企業研修でもそうなのですが、ゴールデンウイーク、お盆やシルバーウィーク、お正月の時期に、うまく休み方の再設定をしていきましょうと提案をしています。
会社で管理されていた時間割がなくなった今、休み方や睡眠を見直すことから、自分の体調や心を整えるということを実践してみてはどうでしょうか。きっと、休み明けのパフォーマンスも向上する、充実した休みになるはずです。
とにかく早寝をすればいいという先入観や、長年の習慣を見直して、実験してみる。もし、それが自分に合うものであれば、新しい習慣として採用してみてはいかがでしょうか。
菅原 洋平◎作業療法士、ユークロニア代表。民間病院精神科勤務後、国立病院機構にて脳のリハビリテーションに従事。その後、脳の機能を活かした人材開発を行うビジネスプランをもとに、ユークロニアを設立。現在、ベスリクリニック(東京都千代田区)で外来を担当する傍ら、企業研修を全国で行い、その活動はテレビや雑誌などでも注目を集める。ベストセラーとなった『あなたの人生を変える睡眠の法則』(自由国民社)や『すぐやる! 「行動力」を高める“科学的”な方法』(文響社)など、多くの著書がある。