脳の専門家に聞いた「疲れ切った脳を休ませる」ベストな方法

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脳にとってのいい刺激とリラックス方法


脳を過度に働かせないために再認識していただきたいのが、脳は省エネを目指す「内臓」であるということです。脳は使えば使うほど能力が上がると考える人が多いのですが、胃を使えば能力が上がることがないように、内臓なりの使い方があるということを知るのが重要です。


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脳は、これまでの経験をもとに、常に次の行動の予測をするのですが、予測どおりに動いていればエネルギーの消費を抑えることができます。

そういった意味でも、新しいことをすることが必ず脳のリフレッシュに繋がるわけではありません。今まで一度もやったことのもないのに、朝からスムージーを作ってランニングを始めるなど、いきなり普段とは違うことをやると、予想しない行動に脳が疲れてしまいます。

エネルギーを消費しないようにしようにして作られるのが、日々の習慣です。自分の意思ではなく、省エネを目指す脳が勝手に習慣化していくのです。

望ましい習慣を身に付けたい時にまず目指すべきが、習慣の一部に新しいものを取り入れるということです。未知の状態が50パーセント、既知の状態が50パーセントというのが、脳が一番やる気になると言われています。

例えば、普段在宅ワーク中の休憩をベッドの上でしているのなら、別の場所で休んでみる。ネットを見る時間も、朝は見ずに昼過ぎからと時間を変更する。

場所を変えることや、順番を入れ替えることは、結構簡単にできるんです。場所を少し変えただけで、だらだらするつもりが、横になっているのが嫌になって動き出してしまったり、時間を変えただけで、無駄にネット情報を見なくなったりすることに気付くはずです。

最近では、教材のオンライン化が進んだことに伴い、朝を勉強する時間に充てたいと言う方が増えています。しかし皆さん、なかなか続かない。朝起きたらまず顔を洗い、朝食をとり、仕事を始めるという長年の習慣が身についているからです。

そこで私は、朝起きたらいきなりパソコンの前に座って、一つの教材ビデオを見切ってみましょうと提案をしています。つまり、動線を変えてしまえばいいわけです。

寝起きに突然そんなことをすることに抵抗感を持たれますが、それは、今までの記憶にない行動だからです。ただ一方で、パソコンの前に座り、動画を見るようなことは今までに経験がありますよね。

だから、「意外と習慣化ができた」という反応を多くいただきます。今までになかった習慣は、こうして取り入れることができるはずです。

脳には、5分、15分、90分と集中の区切りがあります。だからこそ、5分やって乗らなかったらやめてしまうなど、脳の特性を理解した上で実行すると、できてしまうことは多く存在するんです。

休暇中に実践すべき「休み方の再設定」


新型コロナウイルスの影響で、クリニックでの診察も、今は全て遠隔で行なっているのですが、患者さんの相談で圧倒的に増えたのは、「朝起きることができない」というものです。

通勤するという外からの強制力がなくなってしまったので、起床するリズムを作ることが、全て自分に委ねられてしまったわけです。

これまでは、「朝起きて会社に行かなくてはならない」という強制力があることで、就寝中、明け方に向けて血圧は緩やかに上がっていました。予定があるときに、必要以上に早く起きてしまったりするのは、外からの刺激によって準備態勢が作られているからです。
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構成=守屋美佳

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休んで、整える

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