「シティOS」で市民に還元。バルセロナが本当にスマートな理由

「バルセロナ・デジタル・シティ」(バルセロナ市ウェブサイトより)(c)Clara Soler,


市民参加型プラットフォーム「デシディム」


さらに、こうしたオープン・データの利用などを通し、市民自らが課題を発見・共有し新たな政策を提案するためのオンライン参加型プラットフォーム「デシディム」(Decidim)の運用も始まった。

交通渋滞や大気汚染、環境の悪化、社会的格差といった都市が抱えている課題は、決してインフラの効率化だけで解消されるものではない。市民の参加、行政との協働、お互いの関係を豊かにしていくことに解決の糸口があるという考えによって、この「デシディム」はつくられた。 

2016年から2019年の3年間で、すでに市民の70%が登録しており、9000以上の市民からの新たな政策提案が集まっている。

しかし重要なことは、こうした市民参加の機会はオンラインだけが重視されているわけではないという点だ。

バルセロナ市では、「デシディム」のようなオンライン・プラットフォームを行政自らが開発し公開すると同時に、年間100回以上ものリアル(オフライン)の市民ミーティングも積極的に実施している。オンライン活用に慣れている市民だけを対象とするのではなく、むしろ苦手な人をも励まし、出来る限り誰をも取りこぼすことなく、広く市民の参加を促すことで、「市民」主体の社会の実現が目指されている。

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市民ワークショップの様子 (c)バルセロナ市役所

また、直接的な対話を通して、何がいま社会課題なのか、その論点を明らかにして議論を重ねる方が、結果的により効果的な政策立案が可能になるという合理的な判断もある。

都市の状況をデータを通して客観的に明らかにすること、そして同時に市民同士、市民と行政との対話の場を重視すること、その両輪によって「バルセロナ・デジタルシティ」計画が目的とする「真に民主的な都市」づくりが目指されている。

都市の担い手を育てる教育を。フェラン・タラダ校の場合


都市の担い手を育てること。「バルセロナ・デジタルシティ」計画では、その一貫として、特に若者を対象とするアウトリーチ活動も重要視している。

2018年からスタートした「バルセロナ・オープンデータ・チャレンジ」(Barcelona Dades Obertes Challenge)はそのひとつで、バルセロナ市が公開しているオープンデータをもとに社会の課題を見つけ出し、その解決策を生み出すことを狙いとするコンペティションである。

地元の公立学校、フェラン・タラダ校(Institut Ferran Tallada)は、2018年の参加校のひとつ。この学校に通う15〜16歳の男女グループ(スペインの中等教育システムの第4学年)が取り組んだのは、バルセロナ市内の地区ごとの住民の多様性を明らかにするというものだった。
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