経済・社会

2020.07.28 07:00

【全文】オードリー・タン独占インタビュー「モチベーションは、楽しさの最適化」


──今はデジタル関連のトピックに限定されていると聞きましたが、他の問題にまで広げるつもりはありますか?
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私自身、今はvTaiwanに関わっていません。g0vのプロジェクトだからです。大臣になったとき、私はvTaiwanに触発されたパラレルなシステム「Participation Officers Network」と呼ばれるものをつくりました。vTaiwanと同じようなシステムですが、シビック・テックが運営するのではなく、行政官である「パーティシペーション・オフィサー(*4)」が運営しています。

これは、デジタル関連の問題に限りません。サイトでこれまでのコラボラティブ・ミーティング(vTaiwanにおける対面ディスカッション)の項目を見てもらうと、納税申告体験の再設計といったデジタルにかかわるものから、商業漁港においてスポーツフィッシングのようなアマチュアの釣りをいかに規制するかといったもの、食品安全局で働く人たちが、食品添加物に使われる天然放射性物質であるカリウム40をモニターする必要があるかどうかなど、幅広い議論が行われています。

私たちはvTaiwanのプロセスを移管しましたが、vTaiwanとは呼びません。vTaiwanはシビック・ソサイエティのものですから。
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──定期的に「ソーシャル・イノベーション・ツアー」を行っているということですが、どういうものですか? Participation Officers Networkの一貫ですか?

同じプロジェクトではありません。ソーシャル・イノベーション・ツアーは、基本的に私自身が台湾中をまわり、人々に会いに行きます。中央政府の官僚や地方自治体の職員にも参加を呼びかけています。vTaiwanやParticipation Officers NetworkのメイントピックであるJoin Petitionは、まずオンラインによって主導されますが、ソーシャル・イノベーション・ツアーの場合、市民が、フェイストゥフェイスの対話によって主導します。通常のタウンホールミーティングのようなものです。

直接会って話し合う機会をつくり、皆を私とともに連れていきます。ですので、シークエンスが異なります。vTaiwanやJoin Petitionでコメントをする人たちは同じ場所、地域にはいません。ソーシャル・イノベーション・ツアーでは私が、自治体とのつながりが薄いところ、インターネットでの政策議論が行われていない場所へつとめて入っていきます。vTaiwanやJoin petitionの恩恵を受けてないところに注意を向けています。

──総統杯ハッカソンについて詳しく教えていただけますか? いつから始まったのでしょうか?

はい。総統杯ハッカソンは2018年からはじめて、もう3年になります。基点は、多くの優れた市民テクノロジー・プログラムがあるのにもかかわらず、実際に公共エンジニアリング・プロジェクトにもっていくまで力が続かないことでした。ですので、公的機関がアイデアと並走してサポートする必要があるのは明らかでした。

例えば、台湾には離島、オーキッド島(台湾本島の南東沖にある周囲40kmの孤島。台湾原住民のひとつで、フィリピン・バタン諸島から移り住んだとされるタオ族4000人が住む)というのがあります。多くの医師や看護師は、経験を積めないため、そこに行きたがりません。重症患者が出たときや救急搬送の際、人々は本島の医療を信頼しているため、ヘリコプターを呼びます。そのため、地域の医師や看護師は訓練の機会に恵まれず、多くを学ぶことができません。

あるとき、ヘリコプターの墜落事故があり、その後、地元の看護師・医師、専門医師、ヘリコプターの派遣を担当する医師の間で、ビデオ・カンファレンスと呼ばれるアイデアが出ました。インターネットによる会議を患者や、患者の家族の前でも行います。患者や家族は地元の看護師や医師が、離れた本島にいる専門医の指示で治療をしているのを見て、地元の医療従事者を信じるようになります。

しかし、これは違法です。医師がオンラインで患者を診察するのは違法だったからです。医師が同じ部屋にいればできますが、別の場所にいたらできない、という法律でした。でも彼らには必要だった。

(*4)パーティシペーション・オフィサー(PO):中国語で、開放政府連絡人。各省庁間の協働を促進するための役割を担う。台湾行政院の各省庁で少なくとも1人が任命されている。Participation Officers NetworkのWEBサイト(https://po.pdis.tw/en/po/)によれば、パーティシペーション・オフィサーには、政策議論のファシリテーション、ネットユーザーと行政機関の間の通訳、政策コミュニケーションのプロセスの記録(録音、録画、書記)などのスキルが求められるという。現在、32の行政院の省庁で78人のPOが在籍している。
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編集=岩坪文子

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