──あなたが構築したシステム、vTaiwan(*3)について教えてください。とても興味深いアイデアであり、また社会実装です。どのようにして思いついたのですか?
これは、私のアイデアではありません。当時のデジタル大臣ジャクリン・ツァイ氏(蔡玉玲、2013年11月-2016年5月の台湾行政院の無任所大臣。テクノロジーと法律を専門とし、フィンテックや仮想通貨にも詳しい。行政院入閣前は中国IBM、台湾IBMなどの法務部長を務める)のアイデアです。彼女は、このアイデアを2014年の終盤にはもっていました。
ひまわり運動のときと同じようなテクノロジーを利用して、テレワークや、株式資本を投入可能にするためのクラウドファンディングに関する法律の改正、スタートアップ企業の成長を促すための特別議決権株式や非公開企業に関する会社法の改正、というような話題について議論できないか、彼女は考えていました。
これらのトピックを、私たちは「emerging topics(新興トピック)」と呼んでいます。利害をまとめる協会や団体が存在しない、それぞれの利害関係者が彼ら自身を代表しているようなトピックです。サイバースペースが、UberやAirbnbなどの新しいものについて、人々がどのように感じているかを見つけるための探索デバイスのようなものであることが理想的です。ツァイ元大臣の考え方はそのようなものでした。
そして、g0vの共同創設者であるチア・リャン・カオ(高嘉良)が元大臣をg0vのハッカソンに招き、そこでプレゼンテーションをしてもらい、ボランティアを募りました。12人のボランティアがいて、そのうちの1人が私でした。
──同じようなアイデアや実験は世界にあるが、vTaiwanは実装に優れています。実装成功の鍵は何だと思われますか?
私は、ツァイ氏が大臣であったことが大きいと思います。彼女は、各省に少なくともひとつの、サイバースペース内の規制調整に関するトピックを選ぶように依頼しました。また、人々がvTaiwanのプラットフォームでどのようなコメントをしようが、大まかなコンセンサスがどのようなものであるかは、あまり重要ではありません。それらは「アジェンダ設定である」ということが大切です。
つまり、我々は話し合う議題として大まかなコンセンサスをオンラインで行い、常に直接会って議論します。例えば、オンラインで誰かが「Uberに賛成」や「Uberに反対」と言ったとします。これは、アジェンダではありません。Uberについて良いと思おうが悪いと思おうが、保険が大事だということ、登録が必要だということ、適切な管理と安全性が重要である、ということには多くの人が同意します。これらがアジェンダになります。
そして、タクシー協会やUberやその他の利害関係者がこのアジェンダについて話し合います。対話は、インターネットでライブストリーミングされます。すべての人がこの中継を見ることができ、また自らの考えをコメントすることができます。アジェンダを設定する力があり、ライブストリーミングを通じて議論を発展させることが、多くのステークホルダーとの協議の鍵となります。そうでないと、コメントをオンラインに残しただけで何が影響するか分からない場合、誰も真剣に時間を費やさないですよね。
(*3)vTaiwan:カナダの学者が提唱した質の高い審議によって大きなグループを導くプロセスであり、対話を重視するメソッド。シアトルを拠点としたプログラマーによるプラットフォーム、Pol.isによって実現した。オードリー・タンを含むg0vのメンバーのボランティアによってつくられ、シビック・テックが主体となって運営している。