彼がデザインした誰でも簡単につくることができるフェイスシールドは、A4クリアファイルに型紙を入れ3カ所を切るだけで完成する。30秒であっという間にクリアファイルがフェイスシールドに様変わりする実演動画の再生回数は、公開から約2カ月で累計120万再生を突破。コロナ禍の医療現場や教育の現場などで重宝されている。
太刀川が発起人となり非営利で運営されている「PANDAID」では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する研究を一般の人にもわかりやすく伝えるための活動が行われているほか、世界中に広がる感染者の状況を可視化するためのプロジェクトもすすめられている。現在は有志で約300人が「PANDAID」の活動に参加中だ。
その「PANDAID」で都市戦術家として活動しているのが泉山塁威だ。日本大学理工学部建築学科の助教であり、東京大学工学部都市工学科の非常勤講師も務める彼は、2015年には公共空間を豊かにすることを目指すメディアプラットフォーム「ソトノバ」を立ち上げ、現在はその編集長も務めている。
新型コロナを機に「ソーシャルディスタンス」という言葉が広く認知され、私たちの暮らしにおける公共空間のあり方を見直すタイミングとされているいま、泉山は「PANDAID」にとって欠かせない存在だ。
今回は「感染症xデザインx都市計画」という観点から、歴史に学ぶ「都市のあり方」ついて太刀川と泉山の対談をお届けしたい。
感染症の打撃に隠された︎グラフィックデザインの使命
太刀川:「PANDAID」は新型コロナ対策ウェブサイトです。思い立って僕が手弁当でスタートしたのですが、現在は泉山さんはじめ、各分野の専門家が参加し、活動を共にしています。
私はいままでも災害時に必要な知識を共有するためのデータベース「OLIVE」や、防災ブック「東京防災」を手がけるなど、災害時のデザインに関わってきました。こんな活動をしていると、周囲から「デザイナーなのに変わっているね」と言われることもあります。でもこのような疑問を抱く人々も、グラフィックデザインの歴史を知っていれば、災害に関わる活動こそがデザインの源流にあるんだということがわかるはずです。
ソーシャルディスタンシングを解説するユニークなデザインのポスター