太刀川:感染症は公共政策にも大きな影響を与えたのではないでしょうか。ニューヨークのセントラルパークも、結核の流行に大きな影響を受けて誕生したはずです。
NYのマンハッタンに住む人々の憩いの場となっているセントラルパーク(GettyImages)
泉山:そうですね。人類の歴史上、感染症と関わり合う中でソーシャルディスタンスや公衆衛生は私たちの文化に必要不可欠なものとして定着してきました。それは現代の都市計画やデザインにも、大きな影響を与えているんです。
5番街やメトロポリタン美術館に面し、観光名所としても名高いセントラルパークは、マンハッタンに住む人々の憩いの場となっていますが、そんなセントラルパークは公共的な空間と感染症との関係を語る上では外すことのできない場所です。
そもそも1870年代のニューヨークは公園と呼べるような場所がなく、人々がひしめきあうようにして暮らしていました。街の中で安らげる場所が存在しなかったんですね。
太刀川:当時は世界中で「結核」が流行しており、ソーシャルディスタンスの重要性が叫ばれました。過密なニューヨークにおいて、社会的距離を確保できる場所が必要となり、セントラルパークが生まれたと聞いています。
地球上に正しいソーシャルディスタンスはあるのか
太刀川:「ソーシャルディスタンス」という概念はコロナ禍で突如として注目されたわけではなく、ざっくりと総括してしまえば実はスペイン風邪以降100年ぶりに回帰したともいえるのです。忘れられがちだっただけで「公衆衛生」や「デザイン」という視点で見れば「ソーシャルディスタンス」は昔から重要な問題です。
泉山:「ソーシャルディスタンス」が都市計画に影響を与えているという観点で歴史を振り返ってみると、結核以外にも感染症と都市計画の関係性が見えてくる例はあります。現代日本という視点で見ても、「ソーシャルディスタンス」と都市計画は非常に深い関係があるんですよ。