ビジネス

2020.07.03

キーワードは「ナラティブ」。PR TIMES山口拓己代表に聞く、激変する企業発信のこれから

PR TIMES山口拓己代表(写真=小田駿一)


──配信されたリリースで「ナラティブ」を体現しているものをご紹介ください。

例えば近年で言うと、2017年11月1日のワンメディアさんのプレスリリースが挙げられると思います。代表の明石ガクトさんの言葉を引用します。

「代表の明石です。およそ三年ぶりのリリース配信です。僕らの会社には広報が一人もいません。

そのため、普通の会社が送るような洒落たリリース文章は書けないので、とにかく今伝えたい気持ちをFacebookに投稿するような気持ちで書きました。
(もし、この文章を読んで『なんとかしてあげたい』と思ったPR関係の方いらっしゃったら、絶賛採用中ですので是非ご応募ください。)」

プレスリリースの型を理解された上で、型破りなリリースを書かれているのが挑戦的で勇気を感じます。文章を読んでいても本人と話をしているかのようで、普段の人柄や仕事ぶりが伝わるものでした。受け手にとっても当時斬新でしたよね。

ただ今は、特定の会社の特定の役職についている方でないと、まだまだこの語り方はやりにくいですよね。

多くの企業では広報担当の方がプレスリリースを書いていますが、当社ではプレスリリースは基本的にそのプロジェクト担当者が自ら書くようにしています。私が担当する時は私が書きますし、IT・スタートアップメディア「BRIDGE」の事業譲受の際はBRIDGE代表の平野武士が書きました。広報チェックも入れますが、担当者が思いの丈をぶつけることが大事だと思っています。

たとえネガティブな情報であっても伝えるべき


──いただいたお話をまとめると、ナラティブって、一人称でいいことばかりを伝えるのではなく「正直でいる」ということなのかもしれませんね。

そうかもしれませんね。好きなことを好きと言う、達成した結果に対するプロセスを語る、それがなかなかできなかったのかもしれません。

昨年、PR TIMESはシステム障害を発生させてしまいました。東証に適時開示でシステム障害について出そうとしたら、「前例があまりない」と言われました。結局「TDNet」のPR情報で情報公開しました。お客様やステークホルダーのみなさまにいち早く、状況を正確にお伝えしないといけないと考えたからです。

しかし、「なぜ悪いことを発表したのだ」とのご指摘もありました。「PR=アピール」と思っていらっしゃる方もいて、まだまだ自分たちの努力不足だなと思いました。

たとえネガティブな情報であっても情報周知はPRに必要です。先ほどご紹介した列車事故の例からも、全く被害状況が見えないと関係者や社会は不安になります。そういう意味でも正直であるということはこれからの企業発信において重要であると考えています。

──今後、PR TIMESの目指すところを教えてください。

中期経営計画では2021年2月末までに配信企業数5万社を目指しています。接点のない方々にも知ってもらえる機会をつくっています。店の前でチラシを配るのがPRであると考えていらっしゃる企業やお店の方にも使っていただけるようにしていきたいです。

実は2013年に一度グローバル展開を試みたのですが、あえなく撤退しています。当時からは会社の状況も変わり、体力もついてきています。まだまだ英語圏では報道向けのプレスリリースは実は変わっていません。海外展開を真剣に考えるタイミングかなと思っています。私たちが海外に出ていくことで、日本企業の海外でのタッチポイントや海外企業の日本でのビジネスチャンスも相互に広がれば、そう思っています。

文=林亜季、写真=小田駿一

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