ビジネス

2020.07.03 07:00

キーワードは「ナラティブ」。PR TIMES山口拓己代表に聞く、激変する企業発信のこれから


プラットフォーマーに合わせて、コンテンツが変わってきている


──2020年の年頭の辞で「ナラティブ元年」と打ち出しました。その理由や、きっかけとなった出来事を教えてください。

PR TIMESの中でも徐々にプレスリリースのあり方が変わってきています。もしかしたら発信の仕方が変わっているだけでなく、その情報源となる働く人たちの企業活動や働き方そのものが変わってきているのではないかという仮説が出てきたんです。

例えば10年以上PR TIMESを利用してくださっているお客様の富士急行さんのプレスリリースは、配信を始められた2009年から比べると、同じイベント案内やレポートでも一番初めのリリースに比べて最近のリリースは文章のボリュームがすごく長くなっていて、リリース中の画像の枚数もどんどん増えています。熱量が上がっているんですよね。

ツイッターやユーチューブなど、プラットフォーマーやサービスの登場やその使われ方に合わせて、コンテンツ自体がどんどん変わってきていると感じています。特徴的なのが、インスタグラムです。インスタでは日常の中で「おしゃれな瞬間」を切り取って投稿する場所として広まりました。それによって生活者のライフスタイルや企業活動が変わってきました。例えば数年前のナイトプールの流行などはわかりやすい例ですよね。

私たちが「プレスリリースをこう変えていきたい」というより、お客様のプレスリリース自体が変わってきたなと思っています。日々プレスリリースランキングを見ていて、有名な会社や人気のある商品、ブランドの記事だけでなく、一部ではすごく強烈なファンがいて、SNSで拡散されていたりする発表がある。それをもっと広げたいなと思いました。

「ナラティブ」が世の中を前進させる


お客様のプレスリリースの内容や、PR TIMESの利活用のあり方をウォッチしているうちに、もしかしたらこうなるのではないか、と思うようになったのが「ナラティブ」という方向です。

PR TIMESはプレスリリースを出す場として認知されるようになってきました。ここで個人の発信が生まれれば、次の「行動者」が生まれるのではないか。広報の方々が客観的に書くだけでなく、あらゆる人が自分の仕事をオフィシャルに発信するということが、世の中を前進させるのではないか。そんな思いが徐々に湧いてきました。

いま、プレスリリースだけでなく、企業のコーポレートサイトでも活躍する社員の名前がどんどん出てきていて、10年前に比べ一般的になってきました。メディアでも、記事を書いた記者や筆者の名前が明記されるようになってきました。10年ほど前までは社員や筆者の名前を出すとヘッドハントされたりプライバシー上問題だと言われたりしてきましたが、企業内で活躍している「個」が際立つようになってきています。

まだまだプレスリリースは進化するし、もしかしたらプレスリリースの枠を飛び越えて、新しい情報発信やコンテンツの形が2020年を境に生まれ、「振り返ってみるとあそこが起点だったよね」と言われるような年にしたいと思い、年頭の辞を書きました。
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文=林亜季、写真=小田駿一

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