ビジネス

2020.07.03 07:00

キーワードは「ナラティブ」。PR TIMES山口拓己代表に聞く、激変する企業発信のこれから

PR TIMES山口拓己代表(写真=小田駿一)


社内向けに、切実なプレスリリースをしたためた


実は2年ほど前に、当時は「ナラティブ」という表現はしていませんでしたが、私自身も社内向けに、自分の一人称でプレスリリースを書いてみたんです。
advertisement

当時、会社として「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」というミッションを決めて、お客様もどんどん口にしてくださるようになったんです。「あ、いける」と思っていたのですが、それに合わせて会社のバリューを作ったときに、本当にうまくいかなくて……。

バリューミートアップという社内イベントをやったり、当時のバリューをプリントしたコップを作ったりと色々やったのですが、形骸化していっている状況があり、このままではダメだ。私ではなくて、他の社員に頼んで、バリューを刷新しよう、やり直そうと思ったんですよね。その切実な思いをそのまま社内向けにプレスリリースとしてしたためました。「株式会社PR TIMESの山口拓己代表取締役(以下、私)は……」と。

その後バリューの刷新プロジェクトが立ち上がり、実際に作って、発表して、今があるんです。担当者は今なおバリューの浸透に向けて頑張っています。
advertisement

しかし、これまでのプレスリリースの書き方だと「バリューをこのように変えました」ということだけ。どこの企業でも組織の課題と対峙して改善していくプロセスがある。結果だけでなくその過程を知りたいと思うんですよね。むしろ会社が主語というより、担当者という主役がいて、その人が主語になって自分の仕事を語るって、やってほしいなと思ったんですよね。

今SNSなどでは個人で自分の仕事を語っている人も出てきていますが、まだまだSNSで「語っていい」企業もあれば、規定が厳しい企業もある。SNSでは所属を出せない、仕事のことを一切書いてはいけない。そういう企業もまだまだあります。そんな「名もなきヒーロー」がいることをたくさんの方に知っていただき、次のヒーローが生まれる状況にしていきたいと考えました。

まだまだプレスリリースは進化します。プレスリリースの枠を飛び越えて、新しい情報やコンテンツの形が生まれたのが、2020年が起点だったのではないか、そう振り返るような年にしようと思っています。

読者の「有益」を追求すべき


──社内向けとはいえ、あえてバリューの策定や浸透に苦しんでいるということを伝えたのは、どのような思いからだったのでしょうか。

私は自分で言語化する能力が低いと思っているので、低いものは低い、だから助けてほしいと正直に伝えました。たとえいけてないことであっても、赤裸々に現状を伝えることによって、みんなに当事者意識が生まれ、ポジティブな方向に向かうことができました。
次ページ > いいことだけ伝えるのではない

文=林亜季、写真=小田駿一

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事