エビデンスに見るオーガニックのチカラ コロナ第2波への備えにも

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有機食品は免疫力を高める


欧州の研究機関で行われた動物実験から、有機農作物を摂取した動物はその子孫の免疫力まで高めることが明らかになっている。

デンマークにあるオーフス大学の研究者は、有機農法で栽培された餌と慣行栽培の餌で育てられたネズミを2グループに分け、それぞれのグループの免疫力を比較。結果、有機の餌を与えられたグループのネズミの方が、血中に存在する抗体の量が多くなることがわかった。

似たような結果が、オランダのルイス・ボルク研究所でも確認されている。本研究では、有機の餌とそうではない餌を与えられて育った鳥から生まれた小鳥たちの免疫力を比較。オーガニックの餌を摂取した親から生まれた鳥は免疫力が高く、病気になっても回復速度が早いことが確認された。


コロナ禍のオランダでオーガニックの野菜を買い求める人々(2020年4月撮影、Getty Images)

基礎疾患を予防に期待


肥満、アレルギー、がん、糖尿病などの基礎疾患は、コロナ感染の重症化を招いてきた。欧州の研究機関によると、これらの基礎疾患の予防がオーガニック食品で期待できるという。

肥満と有機食品の関係について研究したのは、パリ大学の研究チーム。8年間、5万人以上を対象にアンケート調査を行ったところ、有機食品を日頃摂取する人のグループでは、肥満人口が平均より約20%低くなるということがわかった。

スウェーデンのカロリンスカ医科大学は、アレルギーに関する調査を欧州5カ国で実施。この調査には、有機食品を好んで食べる家庭とそうではない家庭の5歳〜13歳までの子ども14893人が参加した。その結果、有機食品を好んで食べる家庭の子どもの方がアレルギー有病率が低いことが明らかになった。

がんをテーマに行った調査には、オックスフォード大学の研究者らが行なった研究がある。9年以上の間に62万人以上を対象に英国でアンケート調査を実施した結果、有機食品を日頃から摂取する人は、非ホジキンスリンパ腫になる確率が21%低いことが明らかになった。非ホジキンスリンパ腫は、血液細胞に由来するがんのひとつだ。日本人が診断される悪性リンパ腫の90%以上が、この非ホジキンスリンパ腫だと言われている。

スウェーデンとポーランドの大学がそれぞれ行ったインビトロ研究(試験管などの中で人や動物の組織を用いて体内と同様の環境を人工的に作り反応を見る研究)では、オーガニック食品の抗がん作用が明らかになっている。有機農法と慣行農法で栽培されたビートルートのがん細胞株への反応を見た比較調査では、有機ビートルートの方が高い抗がん作用を示した。同様に、有機と慣行で育てたイチゴのそれぞれのがん細胞株への反応を比較したところ、有機イチゴは、乳がんおよび大腸がんの細胞に対して、高い増殖抑制作用を見せたという。

有機農業で作られた食品は、そうではない食品と比較すると、農薬、重金属、環境ホルモンなどの有害化学物質、食品添加物、抗菌剤などの残留量が少ないことがわかっている。このような化学物質に暴露しないことが、結果として、生き物にもともと備わっている自己回復能力を高めたり、免疫系障害や免疫疾患になる可能性を低くしていると研究者らは結論づけている。
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文=レムケなつこ

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