挙式料は写真撮影料込みで20万円~。2人だけで周りの目を気にせず、こぢんまりと挙式したいという人もいることから、衣装代は別で、普段着でも式を挙げられる。大人数での式にも対応する。
寺院として性的マイノリティに特化した結婚式が挙げられるようにするのは世界的にも珍しい。そもそも現代の結婚式は、教会や神前式のほか、宗教にとらわれない人前式などが主流で、古来より存在する仏前結婚式を挙げる人は日本でも全体の1%にも満たないという。今回のサービスは「寺院を生涯を通じて関わることのできる場所」として活用できるようにする狙いもある。
仕掛け人は千田明寛(みょうかん)副住職。寺の息子として生まれ育ち、現在32歳。最近は墓を撤去し、遺骨を他の墓地に移転したりする「墓じまい」や墓の縮小など、あまり明るいニュースがないのが気がかりだった。2世代前の祖父が住職をしていた昭和の時代には「寺子屋」や「駆け込み寺」と言われたように、寺自体にもっと活気があった。
「いまはお寺自体に入りづらいイメージがあって、このままじゃいけない」と、食料品を必要としている家庭に無償で提供する「フードパントリー」の活動を月1回開くなど、地域のコミュニティになれるようにイベントを企画するようになった。
最明寺は地域コミュニティに門戸を広く開いている
「多様性」の原体験はインド留学に
それでは今回、なぜLGBTQ向けのサービスを始めたのか。きっかけとなる千田さんの原体験は、インドにある。
2015年頃に1年間、僧侶としてインド留学をしたことが自身にとって大きな変化の経験となった。最高気温が45度にもなる灼熱の地。カースト制の名残もあり、貧富の差も激しかった。留学先の寺は、都市部ではなく貧困エリアにあり、1日1000人もの地元の人たちが集まり、仏教への信仰心が厚い地域だった。
性的マイノリティだけでなく女性蔑視の価値観すら色濃く残るインドだが、15億人もの人口には、様々な宗教や民族が入り混じっている。千田さんは「自分と考えが違うのが当たり前の環境で、留学先には多様性を尊重する風習があった」と振り返る。
千田さんが滞在していたのは、仏教の寺で孤児院も経営しており、子供達の中には違う宗教の子も生活していた。シーク教の男の子は生まれてから髪を伸ばしてターバンを頭に巻いていて、暑そうにしていたため、冗談混じりに「髪の毛、切りなよ」と千田さんが言うと、他の仏教徒の人に注意され、ハッとした。