オンラインインタビューに答える千田副住職
千田さん自身、インドでは「マイノリティ」だった。周りにいるのは皆インド人で、英語が通じずヒンディー語で会話はできたが、日本から来た自分を受け入れ、優しく接してくれたのだった。「私はこの多様性の文化にカルチャーショックを受けました」。
LGBTQに理解を深めてきた仏教界。川越でもレインボーパレード初開催
日本に帰国すると、仏教界においても宗派にかかわらずLGBTQに関する講習やセミナーが頻繁に開かれており、千田さんも参加した。そんな中、最明寺のある川越も「多様性を認める街」づくりの機運が高まってきた。
2020年1月には、川越市でも東京での取り組みを参考にした「さいたまレインボーパレード」が初開催され、200人ほど集まったが、千田さんは初めてアライ(性的マイノリティを理解して支援する立場)として参加した。
正直、東京のパレードの様子などを見ていてLGBTQコミュニティについて「どんな人たちなんだろう」と理解できていなかった。参加前までは少なからず偏見もあったというが、千田さんは「私がお坊さんの格好だったのもあるかもしれませんが、当事者の方に丁寧に接していただき、自然と交流が始まったのが、今回の結婚式サービスを始める契機となりました」と明かす。
5月には川越市で「パートナーシップ宣誓制度」が導入され、同性カップルがパートナーシップ関係にあることを証明されるようになった。ある参加者から、最明寺で「LGBTQの当事者向けの合宿や座禅を開いてもらえませんか」と打診があり、伝統寺院としてどのような協力ができるか探ってきた。
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最明寺のホームページとは別にウェディング専用サイトも準備し、ウェブサイトやインスタグラムでは英語でも発信している。外国人向けの英字メディアによる取材時に、キプロス出身の記者から「世界中にこのような結婚式をやりたい当事者の人がいるはずだ」と言われた。イスラム教やキリスト教では同性愛者の挙式ができないケースがある。一方、仏教寺院では「同性結婚式ができることを発信する寺院は世界的に見ても珍しいですが、仏教の教えと反しない」と千田さんは判断した。
「同性結婚式」という言葉自体が差別だ、という批判もあるが、あえてそう打ち出すことで「まずはお寺で結婚式が開けることを広く知っていただきたい」と願う千田さん。実は、同性だけでなく異性の結婚式も受け入れていきたいという。
「仏教はもともと多様性があり、どんな人も受け入れる懐の深さがあります。日本はアジア最大の仏教国のひとつですが、仏前結婚式を選ぶ人が少しでも増えてほしい。そして最明寺は思い出の場所として、誰もがいつでも帰って来られるような寺院になることを目指しています」
仏前結婚式では、指輪の交換の代わりに、念珠を用いる。希望者は北海道の念珠店とともに開発した「レインボー数珠」を選ぶこともでき、千田さんは虹色の袈裟を着用する。
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