ビジネス

2020.06.09

日本の大企業で新規事業を成功に導く5つのポイント

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朝日新聞社にエンジニアとして入社してから22年が経過した。最初の12年はプログラミングからシステム開発のプロジェクトマネジメントを実践し、後半の10年は社長室、社内で新規事業開発や投資、R&Dなどを担う「メディアラボ」と、戦略、事業畑を渡り歩いた。

エンジニアとして社内の現場感を学び、社長室で会社全体の構造を把握し、メディアラボで複数の新規事業の立ち上げに携わる中で、最適な新事業の創り方を追求してきた。そして、他の大企業の新規事業部門の方々とも連携を重ね、社内スタートアップを生み出すための共通点があることも概ねわかってきた。

このキャリアと経験から社内スタートアップを生み出すための5つのポイントを列挙したい。

1. 決して中途半端な兼務でやらない


本業をやりながら新規事業を立ち上げる。大企業が陥りがちな進め方だ。これは、本業と新事業の部門の両方に気を遣った結果の折衷案だ。会社としては一番進めやすいが、犠牲になるのは実際に事業を推進するメンバーたちだ。このやり方で立ち上げられるのは、1回きりのイベント事業か、既存の事業に紐付けたサブ事業しか難しいと考えた方がいい。

また、タスクフォースや連絡会で人を集めて、片手間で進めようとするケースでは情報共有だけに終始し、そのような場から事業が生まれることはないと断言してもいい。

新事業だけに集中できる環境を作り、チーム員に勝敗を委ねる。そのような環境を作らないと、本業のあらゆる万有引力にあっという間に吸い込まれてしまうだろう。まずは、会社として本気でスタートアップを生み出したいのであれば、この環境を最低限作ってから進めた方がいい。

2. 調査・アイデアを追いかける部隊と実行する部隊を切り分けてはいけない


アイデアを作る人と実行する人が別々になってはいけない。例えばこのようなケースだ。「誰かが事業アイデアを提案した。その内容がA部門に関係しそうだ。だからA部門でやってみるように働きかけよう」。この状況に陥ると、なかなか進めることは難しい。

A部門はA部門としての考えや予算を背負っている。部門外の、責任を伴わない方のアイデアは、そう簡単には受け入れられない。

しかし、その提案が社長や役員直轄といった、上層部肝入りとなると厄介なことになる。とにかく無理矢理にでも形にしなければならないという忖度が始まる。このような状況で生まれた、提案者の背骨が入っていないような事業は、あっという間に終焉することになる。
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文=荻沼雅美

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