ビジネス

2020.06.09

日本の大企業で新規事業を成功に導く5つのポイント

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3. 「8:2の法則」を理解せよ(心理学的ホメオスタシスを覚悟し、敵ではなく味方として巻き込め)


心理学的ホメオスタシスとは「人の脳は、死なないように変化を拒むという心理現象」だ。私の中にも、周りの方々の中にも、誰しも存在する現象である。

つまり、新しいことをやろうとすると、過去の事例がないからと抵抗する人が出てくる。新しいことをやり続ける必要がある新事業は、こういう抵抗との戦いと言ってもいい。この抵抗は心理的なもので仕方がない。誰しも心理的に抵抗しているだけで、何も悪気があって抵抗しているのではないのだ。そこを十分理解して進めないと、他者や他部署と軋轢を生むことになり、良い方向に進まなくなる。

経験ベースの感覚値だが、「社内調整に費やすパワー」と「事業のために費やすパワー」の比率は8:2くらいに思う。これは、仕方ないと諦めるしかない。社内調整で仮に理不尽なことが起きても対立を生んでしまったら、その時点で負けだ。

いかに相手の立場を理解し、いかに巻き込んでいけるか。社内で事業実現しやすいようにギリギリの調整をしながら物事を進められるか。ここを怠っては大企業の事業は簡単に潰されてしまう。

そのうえでいかに「社内」と向き合うか。大企業内で新規事業を生み出し、成功させるためには、最後はあなた自身に勇気があるかないか。これで成否が決まると言ってもいい。


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新事業は常に選択を求められる。誰かに相談する時間がないことが大半だ。ステークホルダーとの交渉時に、瞬時で判断しないといけない場面は山ほどある。自分だけの判断となるため、場合によっては大きく失敗する可能性があるが、判断を持ち帰ってしまえば好機を失うケースも多い。

多くの会社員はこの状況に慣れていないため、本業の時の進め方を踏襲しようとする。新事業をやったこともない先輩や上司についつい相談してしまう。先輩も上司も何か言わねばと親切な回答をしてくれるだろう。しかし、聞くべきは顧客の声だ。あなた自身が一番知っているはずだ。不安に耐えられず責任を分散したくなる気持ちも分かるが、勇気を持って判断を繰り返していこう。

大企業の新事業は、世の中のスタートアップに比べたら、ノーリスクといえる。失敗しても、クビになるわけではない。だから怯えることなく勇気を持って自ら決断し、事業を推進していく。失敗により、批判を受けるかもしれない。しかし勇気を持って進めている人には、先輩や上司が必ずフォローしてくれるはずだ。
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文=荻沼雅美

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