一方、お隣・中国では出産を機に女性が退職するケースはほとんどない。一体、なぜだろうか。
筆者は上海に9年間滞在し、現地の大学で働いた経験をもつ。同僚の中国人教師の出産を通して、働く女性の妊娠から出産、職場復帰までの状況を紹介したい。
日本の育休率は男女で大差
まず日本では、どのような社会制度があるのかおさらいしよう。まず妊娠、出産に関する制度は、労働基準法で「産前産後休業」が定められており、出産前に6週間(42日)、産後に8週間(56日)の休業が取得できる。
産休後は原則、子が満1歳になるまでの間で取得できる「育児休業」(以後、育休と称す)がある。これは女性だけでなく男性も取得することができる。子が満1歳になっても保育所に入れないなどの事情がある場合には、例外的に1歳6カ月になるまで延長できる。
ただし、育休は全ての労働者が取れる休業ではなく、企業に勤めて1年未満の人や週2日以内のパートタイマー、日雇い労働者は対象外。育休中は雇用保険に加入していることを条件に、「育児休業給付金」が支給される。給付金の額は最初の6カ月間は賃金の67%、それ以降は50%だ。
育休の取得率は男女間でかなり隔たりがある。厚生労働省の2018年度の「雇用均等基本調査」によると、男性6.16%(対前年度比1.02ポイント上昇)、女性82.2%(対前年度比1.0ポイント低下)だった。この10年間の推移をみると、男性は平成21年(2009年)にはわずか1.72%だったので若干増加しているが、女性の取得率が毎年80%台をキープしていることからするとまだまだ低い。この統計から子が1歳未満の間、女性にかかる育児の負担が大きいことがわかる。
男性の育休率が低い理由として、日本では男性の賃金が女性より高く、育児休業給付金が出るにしても、男性が育休を取ると家計への影響が大きいことがある。また、日本社会には「男は仕事、女性は家庭」という考えが未だに根強い。
子供の預け先トップは保育園
女性が職場復帰するためには子供の預け先を決めることが先決だ。日本では子供の預け先は保育所が多く、保育所ではゼロ歳児から小学校入学前までの児童を預かってくれる。
保育所には国の設置基準をクリアし都道府県知事の認可を受けて公費で運営されている「認可保育所」と「認可外保育所」がある。認可保育所は保育料が安いが、子供の数が多い大都市では保育所不足で入所が難しいことも。子供が保育所に入所した後も、子供が熱を出した時に連絡がくるのは母親のところで、職場復帰後も子供のことを気にしつつ働くことが多い。
一方、子供の養育を常時、両親や義父母に頼んでいる家庭は少ない。母親が病気や仕事でどうしても保育所への送り迎えができないなど特別な場合に限って頼むのが普通だろう。常時、頼まない女性の本音として「(親は)保育士ではないので、ちゃんと子供の世話ができるかどうか心配」「(義父母とは)もともと考え方が折り合わないので頼みにくい」などといった声がある。