「怒りを爆発させて破壊行為を行っても、何の役にも立たない。そんなことをしても私の兄は帰ってこないんだ」とフロイドは、兄が警官に首を膝で押さえつけられて亡くなった現場で語りかけた。
彼は聴衆らに対し、彼の家族が平和を望んでいることや暴力からは何も生まれないことを訴えた。
「これでは同じことの繰り返しだ。暴力的な抗議活動や破壊行為は変化を起こせない。なぜなら、人々が破壊しているのは自分たちのコミュニティだからだ。こんなやり方では何も変わらない」
そしてフロイドは「別の手段をとろう」と呼びかけた。「自分たちが声をあげても無意味だなんて考えるのはやめて、投票するんだ。選挙について学んで誰に投票すべきか考えろ。そうやって敵を倒すんだ」
彼はスピーチの最後を「私の兄は暴力を望んでいない」という言葉で締めくくり、平和的な抗議活動の必要性を訴えた。
5月25日、ミネアポリスで武器を持たない黒人男性のジョージ・フロイドを取り押さえた白人警官のデレック・チョーヴィンは「息ができない」と悲鳴をあげるフロイドを、膝で9分近く押さえつけ、死亡させた。その動画がソーシャルメディアで拡散すると、全米各地で抗議活動が発生し、一部の都市では暴動や略奪行為に発展した。
白人警官のチョーヴィンは29日の逮捕後に第3級殺人罪で起訴されたが、その後も抗議活動が沈静化する気配はない。
6月1日の情報番組「グッド・モーニング・アメリカ」のインタビューでテレンス・フロイドは、「兄は心優しい巨人だった。彼は平和と団結の尊さを示してくれた」と述べた。
「今起こっている事態を団結と呼ぶ人もいるかもしれないが、これは破壊のための団結だ。これは兄が望んでいたものではない。怒りのエネルギーを前向きなものに変えてほしい」
フロイドの発言は、全米の各都市で抗議活動を行う人々の間で広がる、暴力行為をやめて政治的変革をもたらそうという声につながっている。ニューヨークのブルックリンでは31日、警官隊らが人々の前でひざまずき、団結と暴力的対立の抑制を呼びかける場面も目撃された。