家事分担は当たり前、祖父母の子育て参加も。中国のリアルな保育事情

中国の子育ては、日本とは少し異なる事情がある(Getty Images)


育休はなく産後休業が終わるとすぐに就労


ところで、筆者は上海市内の国立大学に勤務していたが、職場には16人の中国人教師が働いており、そのうち13人が女性だった。女性教師は20代から30代の若い教師が多く、筆者が在籍していた間、妊娠した、出産したという話を聞いたことがある。その体験から中国の女性の妊娠中と職場復帰後の仕事内容、子供の預け先、中国の保育施設などについて紹介したい。

同僚の張燕さんが第一子の男児を出産したのは4年前のことだ。彼女は中国の大学で日本語を専攻した後、日本に留学して博士号を取得。帰国後、当校に日本語教師の職を得た。出身は上海市に隣接する江蘇省で、実家には今も両親が住んでいる。張さんの夫は食品関係の日系企業に勤務するサラリーマンだ。

産後休業が終わり、久しぶりにキャンパスで会った時、子供のことを尋ねると、「うちの子は標準より体が小さくミルクもあまり飲まないの」と心配そうに話した。中国では産前休業が15日、産後休業が83日で合計98日の休業が取れるが、育児休業は定められていないので、女性たちは産休が終わるとすぐに職場復帰しなければならない。(「女性職員労働保護規定」*1)

*1: 育休の定めはないが、出産後、1年間は「授乳期間」と定められ、1回につき30分の授乳休暇を1日2回取ることが認められている。

中国は祖父母の子育て参加が一般的だ
子供を祖父母に預けて働く夫婦も多い (Getty Images)


子供を実家に預け職場復帰


張さんの妊娠中と出産後の仕事量について、妊娠中は1週間の授業は週5コマ(1コマは90分)で、一般的な教師の仕事量からするとやや少なかった。通常は週5~6コマの授業のほか、夜間の補習や検定の試験対策など課外授業が割り当てられることになっている。

しかし、職場復帰して次の学期では、週6コマの授業が割り当てられ、課外授業も他の教師と同量に配分されていた。さらに日本語検定試験対策の責任者という責務も与えられた。

以前のようにバリバリ働き始めた張さんだが、子供はどうしているのかと聞くと、江蘇省の張さんの実家の母親に預かってもらっているとのことだった。週末になると夫婦で実家を訪ね子供の様子を見に行く。実家周辺は緑が多く、空気も上海に比べると良い。そのことが幸いしたのか、子供は生まれた時の心配も何のその、すくすく元気に育っていったようだ。張さんはスマホで子供の写真を撮っては、大学の職員室で嬉しそうに同僚教師に見せていた。

このように、中国では生まれたばかりの子供は実家などに預け、祖父母が養育するのが一般的だ。一方、外部の保育施設に預ける家庭は少ない。そもそもゼロ歳児を預かってくれる施設はないのが実情だ。
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文=廣田壽子

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