──日本もアメリカの企業のように、本気度を見せるために政治的メッセージを出すところが今後増えていくのでしょうか。
「政治的」をどのように定義するかにもよると思います。一つ言えるのは、日本では法律で定まっていない社会的通念が同調圧力として人々を時に苦しめることがあります。それに対して、企業がメッセージを発信するパターンが日本では増えてきています。
例えば、就職活動の時期には多くの学生が画一的な服装や髪型を求められます。しかし、これは法律で決められているわけではなく、暗黙の了解で就活スタイルが確立されました。
これに対してヘアケアブランドのパンテーンは「#令和の就活ヘアをもっと自由に」というキャンペーンをはじめ、一人ひとりの個性を大事にしたヘアスタイルで就活に臨めるように100社以上の企業を巻き込んだメッセージを打ち出しました。
日用品メーカーのユニリーバは、履歴書の性別欄、写真、名前の欄をなくし、見た目や性別ではなく、その人の特性や能力で採用を判断しやすいようにしました。これも「当たり前」を疑い、企業がアクションとともに変革した例です。
日本の場合は、このような社会的通念に対する企業の発信が今後も増えていくのではないでしょうか。
企業が政治的メッセージを発信することが、たとえマーケティングの一環だとしても、そのメッセージが消費者に寄り添い、本質的なものへと近づくことは喜ばしいことだと筆者は思う。
今回のジョージ・フロイドさんの死によって立ち上がった数々の大企業に消費者が支持することで、より企業の社会的責任の価値は高まるだろう。間接的ではあるが、それもある種の抗議運動の一つになるのかもしれない。こうした非暴力的な運動によって、差別に対するアクションが早急に行われることを願うばかりだ。